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NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
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2006年12月24日 クリスマスコンサート2006

【報告:齋藤健治/月島在住・編集者/2階C1列4番より報告】

ホールへと続く,長いエスカレーター。
そこを埋める観客の群れ。

「今年はとてもお客さんが入っているのではないですか?」
「お蔭様で6回めを迎えましたので」
プロデューサーの一人はこのように語る。
もう一人のプロデューサーはトナカイの耳を頭につけて微笑んでいる。
「これ,あんまりお辞儀をしていると,とれそうなんですよ」
かたや,旧第一生命ホール解体時には美しい写真を残しているサポーターの方は二人の息子さんを連れ,接客に忙しい。そして子どもの一人は,サンタクロースの帽子を被り,愛らしい。

今年もTANのクリスマスコンサートが始まった――。豪華な飾り付けを施すでもなく,大枚をはたいて著名アーティストを招聘するというものでもない。その真逆に,オーディションに受かった若手アーティストが,10日間のセミナーで磨いた腕を披露するという今宵の趣向。海のものとも山のものとも知らぬ未来の可能性に,かける。そこに,600を超える観客が集まっていた。

* * *

「よく溶け合っているのだけれども、膨らみがほしい。一人ひとりの声が聞こえてこない。少々表現に平坦なところが寂しい」
これは一昨年にモニターを務めた際のレポートの一部である。

毎年受講生は変わるので,“去年に比べて今年は……”という比較はおかしいが,“さて,今回はどうだろう!”という思いは増す。
なぜなら,観客はその日,一日しか,その場には,いない,からだ。どうか,今日のステージは,びっくりするようなサウンドを聴かせてくれ,と願う。なぜなら,楽器で人を酔わせるという力は,選ばれた,あなた方しかできないんだから。

* * *

そして今年も,プログラムの1曲目は受講生だけによる演奏。そして2曲目は講師の松原勝也氏を交えてのアンサンブル。3曲目は講師による室内楽であり,最後は受講生と講師全員による合奏。この流れは変わらない。
さて,今回はどうだろう?

* * *

1曲目は,メンデルスゾーン「弦楽のための交響曲 第4番 ハ短調」。
16名の受講生がステージにつく。
さて!
冒頭の響きが生き生きとしている。躍動する。それは第2楽章に入ると緩やかさを加え,第3楽章は古典的なサウンドを奏でる。
なんとも堂々とした演奏だ。
2曲目のブリテン「シンプル・シンフォニー 作品4」でもそれは変わらない。特に第3楽章は音の連なりが物語を語るようなサウンドにあふれ,終楽章での広がりにつながっていく。

そして,受講生の「顔」が見えてくる。顔とは「いま,ここで,私は,何を,どのように,表現したいのか」という意味においてである。
ヴィオラの一人が,非常なる存在感をもって目に映ってきて,やまない。

ここで昔聞いた某音楽ジャーナリストからのアドバイスを思い出す。

「まず,一人のアーティストに注目してみなさい。その音にじっくり耳を傾けてみなさい。そこから,あなたは,コンサートを“愉しむ”ことが,できるでしょう」

それを思いだし,今回はヴィオラの音に神経を傾け,その地点からアンサンブルを聴いた。ここから生まれてくるものは,ヴァイオリン・パートの奏でる数ミクロンとでも言えるかの柔らかく暖かく,しかし強靭なベールの響きであり,チェロがはなやげ,コントラバスが大地のごとく締める。

サポーター/モニターのA氏は,こう言った。
「コントラバスがとってもうれしそうに弾いていましたね」

600人を超える観客の中,その観客一人ひとりの印象はまるで違うかもしれないし,その観客一人ひとりに浮かぶ「顔」も異なるだろう。
しかし,ステージの若者たち一人ひとりの,端正な姿は,たしかに「顔」として,一人ひとりのアーティストと一人ひとりの観客の間で,刻まれたのではないだろうか。

「今年は,特に,パートごとに集まって話し合いをしたそうですよ」とは,広報嬢の言葉だ。

* * *

ステージは続く。講師の「プレアデスQ」は流石の安定感を魅せ,最後のバルトーク「弦楽のためのディベルティメント Sz.113」は,第1楽章で壮大なスペクタクルと厚みを魅せ,第2楽章は地響き,大きな風,大地の揺れ,を表現する。最後は,リズム! リズム! リズム! の応酬。荒れ狂いながらも,アンサンブルは密集する。

* * *

コンサートが終わり,レセプションの場へと移る。
受講生は「こんな経験ができて嬉しい」「10日間みなさんに会えて,幸せな時間でした。また来年も受けることができたら」と語る。
一方,TANを支えるサポーターの代表は「音楽の仲間というのは素晴らしい」と告げる。

そして松原氏の「これは出発点なのです」という発言が続く。

目を転ずれば,プロデューサーは今宵集った方々との談笑。またTAN職員はサポーターとじっくり語り合う。
一方では,新年開けての新企画のため,早速打ち合わせているサポーターもいる。

その中で,一人の,今宵のステージに立ったアーティストと語ることができた。
ふと見ると,その左肩は真っ赤である。
この音楽に接したいがため,来年以降もクリスマスコンサートが続くことを。
そして,この東京湾岸というちっぽけなエリアに,音楽と,そして「人」が集う,ことを。
なぜなら,このクリスマスコンサートは,「出発点」だから,だ。
by tritonmonitor | 2007-01-09 16:04 | アドヴェント&クリスマス
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