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NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
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2月6日(土)クァルテット・エクセルシオ ≪20世紀・日本と世界Ⅲ≫

2010年2月6日(土)18:00
【報告:土田大志/神奈川県在住/1階14列14番】



風が強いと地球は誰かの凧のようだ…ふと谷川俊太郎のソネットを口ずさみたくなる、立春を迎えたばかりの北風の吹く夕暮れでした。
トリトンスクエアは外の慌ただしさとうってかわって穏やかで暖かく、たどり着いたとたん、ほっ、と一息。プログラムに軽く目を通したところでベルが鳴って。さて、演奏会の始まりです。

少し風変わりなグレーの衣装をまとった4人が登場。統一感はありますがひとりひとりデザインが違います。静かに楽器を構えると、高い音からゆっくりと、音楽が地上に降りてくる。低いところでエネルギーをためてひときわ弦を大きく鳴らすと、ふたたび天空へ響きを投げ返す。
シュニトケの弦楽四重奏第2番。自動車事故で亡くなった友人への悲歌だそうです。古代ロシアの讃美歌を用いた深い悲しみの中、地上から天上へと語りかけるような曲でした。冷たく広大な第2番の世界観に引き込まれてきたところで、続いてシュニトケの第3番。
ん?これはどこかで聴いたことのある響き。そうかと思うと、ふっとその音楽が溶けて、また現代の響きに戻る。そしてまた別の、耳馴染みの良い音。
第3番はルネサンスの音楽やベートーヴェンのフーガを引用しているそうで、それらがモザイクのように散りばめられているのです。しかしその繋ぎ目は全く見事に溶融されていて、完全に一体化している。楽章をまたいで共通の主題が何度も登場するのですが、それがなんとも静かな感動を生む。
シュニトケは、過去の音楽に深い敬愛を抱いていたのでしょう。そして自分の愛するフレーズを溶融し、現代の書法で自分の音楽にした。
クァルテット・エクセルシオはそうした一つ一つのフレーズの持つキャラクタを存分に表現しながら、見事に一つの音楽としてつくりあげてくれました。

休憩をはさんで、後半は西村朗の2作品。
シュニトケがそれまでの西洋音楽を模倣したことに対し、西村作品は過去の西洋音楽へ挑戦をしているように感じました。
弦楽四重奏のためのヘテロフォニーでは、まず音階という概念を破壊。四つの楽器が一つの音に集まったかと思うと、ポルタメントで大きくうねりながら乖離し、またひとつになる。4本の音の曲線が、奔放に空中を動きまわる。
「光の波」では、断片的なパルスが少しずつ集合して、一つの方向性をもち、また冒頭へ回帰する。円環構造。連続的な旋律という概念からの離脱。シュニトケの詩的な作風に対し、西村作品は精緻な彫刻を観ているような感覚に陥りました。

西洋の楽器を使いながらも、笙や篳篥、尺八、ホーミーを思わせる響きあり、ケチャをヒントにしたというリズムホケットあり。何処となく東洋の香りが漂います。ケチャの部分では4人が一つの打楽器のような、不思議な一体感がありました。
このあたりでようやく小さな違和感に気付いたのですが、このクァルテットは誰かが過剰に合図を出して他のメンバーがそれに追従する、といったことがありません。
これ程の難曲であれば、たいていは大きく合図を出さないと不安になるものですが、彼らは必要以上にお互いを威嚇することなく、それぞれがきちんと主張してアンサンブルが乱れないのです。長年常設の四重奏団として活動してきたからなのでしょうが、個人的には非常に驚きました。

演奏会が終わって会場を出ると、外はもう真っ暗。ビルの明かりがきれいです。風はまだ強かったのに、来た時よりもずいぶん暖かな気持ちで帰路につくことができました。
by tritonmonitor | 2010-02-22 12:52 | SQWシリーズ
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