NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
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音楽のある週末 第5回 梯 剛之 ピアノ・リサイタル

2010年11月20日(土)14:00開演
【報告者:中川和子/フリーエディター/東京都在住 1階10列21番】

力強く優しいショパンの調べに、観客全員が酔いしれた午後

『お願い』の看板に、スタッフの行き届いた配慮を感じる

晴海トリトンスクエアには仕事で何度が足を運んだことがあったが、第一生命ホールに入るのはこの日が初めて。休日のせいか、スクエア内には人影はまばらで、少し不安になる。
ところがエスカレーターで会場ロビーに着くと、そこは音楽好きの熱気が溢れ、室温が少し高く感じられた。窓からはゆっくり流れる川と秋の陽差しが望める。土曜の午後の非日常空間に、コンサートへの期待が一気に高まる。
ホールの入口付近には『お客様にお願い』の看板があった。それは「盲導犬を連れていらっしゃるお客様がいらっしゃいます」という知らせとともに、盲導犬に対する注意事項を列記したものだった。実は会場に入る前、化粧室でゴールデンレトリバーを連れた方たちとすれ違った。看板はこの方たちに配慮したものだったのだろう。スタッフの行き届いた心遣いに感心すると同時に、どこのホールにも、目の不自由な方が積極的にコンサートを楽しめるような環境作りをお願いしたい。
ホールの中は白木を基調にしていて、大き過ぎず、とても落ち着いた雰囲気だ。私の席は2つ目のブロックの最前列でほぼ中央付近にあった。少し早めに席に着き、プログラムで曲目などを確認する。土曜の午後のせいか、はたまた11月22日の『いい夫婦の日』が近いためか、想像以上に男性客の姿も多い。年齢もバラバラという印象を受けた。ただ、オール・ショパン・プログラムで土曜の午後ということを考えると、ピアノのレッスンに通っているお子さんや、若い人たちがもっとたくさんいてもいいような気がした。

梯さんの゛力強いショパン”に圧倒される

本日の主役、梯剛之さんのピアノを聴くのは初めてだ。恥ずかしながら、目が不自由でいらっしゃることぐらいしか予備知識はない。今年はショパンの生誕200周年にあたり、世界各地でショパン関連のコンサートが開催されているようだが、私自身はその波に乗り遅れている。しかし、子どもの頃、ピアノのレッスンに通っていたこともあり、ショパンの曲にはなじみがある。『子犬のワルツ』をよく練習したっけ……。そんな感傷に浸りつつ、開演を待った。
お母様に手を引かれた梯さんは、グレーのスーツに白い蝶ネクタイ姿で登場。想像以上に小柄でスリムだ。そして、スタインウェイの鍵盤の上で白い指が動き始める。
「ショパンの曲って、こんなに力強かったっけ?」最初の『舟歌 嬰へ長調 作品60』でこんな感想を持つ。続く『幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66』はショパンのピアノ曲の中でも名曲中の名曲。右手と左手の流れるようなリズムの中でも、その力強さは変わらない。「あんなに華奢な体の、どこにあんなパワーがあるのだろう」と驚嘆。
『スケルツォ第2番 変ロ短調 作品31』『ワルツ第3番 イ短調 作品34-2』、そして『アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22』と演奏は続く。主旋律はあくまで力強くダイナミックに、そこに、ショパンらしい繊細な音の動きが混じり、とても心地良い。あまりの気持ち良さに船を漕いでいる観客も見受けられた。
5曲が終わったところで15分の休憩に。ロビーに出ると、グラスワインを片手に歓談する観客の姿が見られた。土曜の午後にこんな時間が過ごせるなんて、なんて幸せなことなんだろう! もちろん、夜のコンサートもいいが、今日のような昼下がりのコンサートも心身を芯から和ませてくれる。

5度のアンコール、そして夢の空間の終わり

第2部は『ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58』の演奏だ。ショパン最後のソナタは、彼の波乱の人生が凝縮されているような曲である。プログラムのメッセージの最後に、梯さんは「もし可能なら……やっぱり僕は「ショパンの再来」になりたいな……。」という一文を添えられていた。病気を克服され、ピアノとともに生きてこられた梯さんは、ショパンの人生にご自身を重ねているのかもしれない。激しく、そして切ない演奏を聴いていると、何とも表現のしようのない感情が湧いてくる。
演奏が終わると、梯さんは観客に向かって何度も深々と礼をされた。拍手が鳴りやまず、アンコールが始まった。1曲、そして2曲……。日本人はシャイなのか「ブラボー」と叫ぶ人は少なかったが、それでもいっこうに拍手は鳴りやまない。あまりにも心地良く、素晴らしい演奏の場から、現実に引き戻されるのが怖くて、私たちは何度も何度もアンコールを要求してしまったのだ! また、その気持ちを察してか、体力の消耗を心配されるお母様を尻目に、梯さんの演奏は続いた。4曲目は『12の練習曲op.25 第11番「木枯らし」イ短調』。そして、5曲目のそれまで以上に優しく響く温かな演奏を聴き、私たちは席を立った。たぶん、観客全員が「これ以上は申し訳ない」という気持ちだったに違いない。終演は4時22分頃。予定を30分もオーバーしていた。
ロビーでは梯さんのCDを買い求めようという人たちが売場に殺到。即席のサイン会も催された。サインを求める人、一人ひとりに「ありがとうございました」と声をかけられる梯さん。その様子を見てから、私は会場を後にした。外はすっかり夕闇に包まれていたが、素敵なリサイタルに出会えたことに感謝しつつ、足取りはとても軽くなった。
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by tritonmonitor | 2010-11-20 19:15
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