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レクチャーコンサート Plus#14 “魅惑のトリコロール” 古典四重奏団
1月15日(土)15:00開演
【報告者:今野高/団体職員/柏市在住】 ドビュッシーの世界が少しわかった気がした。 これはなかなか手の込んだレクチャーだ。 トリトン・アーツ・ネットワークのHPのコンサート案内では、「#14」と記されてあったので、14回目のレクチャー・コンサートかなと想像し、「トリコロール」とあるからフランスものかな、どんな曲をやるのかなと想像しながら、トリトン・スクエアへ。 プログラムをもらって、完全に私の勝手な想像が間違っていたことに気がついた。私はてっきり、数曲の演奏を聴かせながら、演奏法や曲の音楽解釈などをレクチャーするのかと思っていたが大きな間違い。考えたら当然か・・・公開レッスンでも公開リハでもなく、レクチャー・コンサートはこれが普通だ。 レクチャーは、ドビュッシー、ラヴェル、フォーレの弦楽四重奏曲を軸として、これらの音楽の背景にある J.ティトルーズや L.クープランの音楽を入れ込み、また教会旋法や民族音楽の旋法がどのようにドビュッシーやラヴェルの音楽に組み込まれているかを解説するという構造。 フランスの音楽は、私には「美しい」という貧相な語彙しか持ち合わせていない。とても美しいと思うけれどけど憧れの世界。この世界は私の血には流れていない。 でも今回、この美しさの背景が何なのか、初めて入り口が見えたような気がする。 私には斬新・奇抜に感じられていた新しい響きも、その根底にはもっと何かがある、それが教会旋法だったり、民族音楽の旋法だったり、先達の音楽の緻密な学習の蓄積から生まれていたのだ。 そう、今の時代のレコード(もう過ぎ去った時代か)やCDなど複製芸術が発達していなかった時代、過去の音楽を知るには譜面しかなかった時代、弾いてみて、あるいは写譜してみたり、今では想像できないくらい手間をかけた学習と深い理解があったのだろう。 面白かったのは、ドビュッシーの3楽章の冒頭の解説。「私が先生ならこう書き換えさせます」と言っていくつかのかたちを弾いてくれた。どれもきれいで、納得!って感じ。落ち着いた美しさ。さて本当のドビュッシーはどうだったっけ?なんて思う頃に本物の冒頭。グッと腹の中が捻れるような衝撃。あぁ こういう美しさなんだ。メビウスの環がもうひとひねりしたような、それでいて妙な納得感と安定感。ドビュッシーの世界が少しわかった気がした。これはなかなか手の込んだレクチャーだ。 田崎さんの解説も楽しい。一度聴いただけでは覚えきれない、何故ノートの準備をしてこなかったのかと悔やまれる。再放送なんてないのだろう、残念。 どの曲も美しいけど、部分的なのでちょっと単調で午後の睡魔が忍び寄る(ごめんなさい)。 でもウトウトしても音楽は聴こえている。それにしても柔らかい音、木の温もりときめのこまかい音が心に沁みる。そう、普段CDの鮮やかで輪郭のハッキリした硬い音に慣れてしまっているけど、本当の弦楽器の音はこんなに柔らかいのだとつくづく感じる。 これを聴いて、私もトリコロールのカルテットを猛烈にやってみたくなった。たまたまピアノ・カルテットでフォーレかショーソンをやろうか、なんて話も持ち上がっているところ。弾いてみればこの魅惑の響きが、少しは私の血に溶け込むかも知れない。 蛇足ではあるが、このレクチャー・コンサートは入場無料。これはどういうこと?スポンサーは?余計な詮索はさておき、これは聴かなきゃ損だ。 帰り道は御徒町で電車を乗り換えるので、アメ横で道草。久しぶりに雑踏の活気を堪能する。今日は、一粒で2度美味しい経験をした。
by tritonmonitor
| 2011-01-15 19:37
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