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NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
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12月13日(水)ボロメーオ・ストリング・クァルテット:シェーンブルクプロジェクトvol.3

佐々木久枝(会社員&華道教授・中央区勤務) 1F2-27

ゴリホフ:テネプレは第1ヴァイオリンのニック氏のクラスメートの作という事もあり、公演冒頭に据えての演奏には並々ならぬ気持の入れようが伝わってきました。曲名に付された「影」は元々信仰における苦悩と悲嘆の表れのようですが、実際の演奏には一音一音に朴訥とさえ思わせるような真っ直ぐさが感じられ、不思議な安らぎを与えてくれました。第2場面での急速な展開や続く第3場面でのヴィヴァルディ四季の冬さえ思わせるような刻みが印象的でした。そのような劇的な部分もまた祈りの曲にあっては対角上の意味合いを持たせるような印象でした。ヴィオラとチェロの緩やかな弾き口は澄んだ安らぎを与えてくれましたが、女性奏者達という事を問わず、ある種の慈悲的な響きに聴けたのは私だけでしょうか。

続いてシェーンベルグ第4番。第1楽章アレグロモルトでは怒りのエネルギーを存分に込めているテクストを踏まえた味な演奏を聴かせてくれました。続く第2楽章コモンドではウィンナ・ワルツの華やかさにある種の表裏を思わせる演奏でしたが、もしかするとこの部分は冒頭曲と意外にも関連付けられ得るかもしれません。第3楽章ラルゴでは第1ヴァイオリンの切り込むような部分に裏拍の迫力はかくも激しいものかと驚きました。他3者も雰囲気も音もぶつかり合った(途中ユニゾン部分こそあれ)緊迫感に溢れていました。
フィナーレのアレグロでは狂乱の場を思わせる場面での第1ヴァイオリンの弾き出すガムランのような弓捌きが印象的でしたし、怒涛の如く流れて(否、なだれて)きた上でのラスト数小節の静けさが非常に際立っていました。

後半はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第16番ヘ長調op.135」全体的に爽快さと躍動感に満ちていた充実の演奏だったと思います。第1楽章アレグレットでは伸びやかな第1テーマと展開部での広がりが印象的でしたし、続く第2楽章ヴィヴァーチェでは中間部の全体からのオーラが漂い、田園交響曲のような素朴な伸びやかさがよく表されていました。第3楽章レントアッサイでは全体に黄昏の歌が漂い、中間部の短調ではややお疲れ気味とおぼしき部分も見受けられるも、コーダでのヴァイオリンの問いかけ+チェロの"突っ込み"の積極さとが絶妙に混ざっていました。「ようやく付いた決心」と記されたフィナーレでは正に突き抜けた印象を上手く弾き出していました。再現部は苦悶の渦から這い上がるような語法を読みましたが、ちょうど崖から這い上がってきた子獅子が無邪気に桃源郷で遊ぶような印象を受けました。歌舞伎舞踊ではちょうどここは髪洗いの場面で長い獅子毛を振り回すのですが、ベートーヴェンも作品中で"獅子毛を振り回している"かのようなイメージが浮かんできました。伸びやかで雄弁でしかもシンプル。私のツボにはまってしまったのかもしれません。

アンコールの「ラズモフスキー第2番」第4楽章での色彩感豊かなアンサンブルは今正に目の前で現役バリバリのアクセル全開・しかも野太い演奏でで室内楽街道を突っ走っている印象を強く受けました。
今回初めて"きちんと"フル演奏で聴いたボロメーオでしたが、本番後ほぼ恒例となっている一献でいつも辛口コメントのとある知人が評価しているのを聞いて思わずほくそえんだ私です。さて今度はどのように"化けて"くるやら。今から楽しみです。
by tritonmonitor | 2007-01-08 03:45 | SQWシリーズ
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