【報告:川澄 直美(TANサポーター・2階席R2列31番)】
演奏が始まる直前、「そういえば、チェンバロをホールで聴いたことあったかな」と考えている間に拍手が静まり、しばらくして演奏が始まると、私の中で珍しいことが起こりました。
初めて聴いた曲なのに、頭の中で楽譜を開いて、ただひたすら目で追っているような、出来もしないのに書き取っているような、ありもしないのに一緒に弾いてるような不思議な感じでした。ワクワク感が止まらない時間でした。そんな感触が、バッハの作品のときだけだったのは、私の音楽力の乏しさによるものなのでしょう。
小学生の頃も大人になっても、バッハの作品を弾いてるとき、譜読みや両手のバランスが難しいから大嫌いだったはずなのに、そんなことを忘れて、音楽に集中していました。休憩のときには、バッハを弾きたくなっているのが我ながらおかしかったくらい、素直に楽しんでいました。
演奏の合間の拍手と、そのときの柔らかい表情とピンとしたたたずまいから、長い間、活躍されてきたからこその観客の思いみたいのを、レオンハルト氏は受け止めていらっしゃるのかなと、感じる演奏会でした。