人気ブログランキング | 話題のタグを見る

NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
by tritonmonitor
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
全体
TANモニターとは
TANについて
TANモニタープロフィール
SQWシリーズ
ライフサイクルコンサート
TAN's Amici コンサート
コミュニティ活動
ロビーコンサート
その他特別コンサート等
レクチャー・セミナー
NEWS
チャットルーム
アドヴェント&クリスマス
未分類
以前の記事
2011年 03月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
フォロー中のブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


6月8日 SQWフェスタ 第6日 ~昼下がりの19世紀

この演奏一曲にて千秋楽―メンデルスゾーン弦楽八重奏曲―
【報告:尾花勉・TANサポーター(2階L5列25番)】                             

グァルネリ・デル・ジェス作「バロン・ビッタ=ゴールドベルグ」。男爵の尊称を以て遇される名ヴァイオリンを携えた米国の俊英ボロメーオ・ストリング・クァルテットと、春秋に富む我国屈指の四銃士、クァルテット・エクセルシオ……SQWフェスタを締めくくるに相応しいこの競演、否、大一番が今や始まろうとしている。曲はメンデルスゾーン=バルトルディ不朽の名作、弦楽八重奏変ホ長調。二つの弦楽四重奏ががっぷり四に組むのに此程相応しい曲はない。さぁ、どんな勝負を聴かせてくれるのか……堂内に居座る全ての人はこれから展開されるであろう丁々発止を固唾を飲んで待った。
 鞭声粛々夜河を過るが如き気迫と緊張を漂わせ乍、強者達が入場して来た。暫しの静寂の後、その張り詰めた空気を一気に解放する様な冒頭で一頭飛抜けて鳴る男爵の響きに私は唖然とした。それは既にヴァイオリンの音でなく明らかに人の声、それも威厳に満ちた貴人の肉声なのだ。流石は男爵の御者を務めているボロメーオの面々、主人を気持ちよく語らせる為に絶妙なバランスで会話を取り持つ。その持て成しを受け一層尊厳を増した男爵の威風に圧倒され、土俵際へ追い遣られたエク……あ、危ない、と思った正にその時である。私は第二チェロを務める大友氏の背中に気焔が上がるのをはっきり見た。そして譜面台越しに火の付いた様な両の眼を同士にしっかと差し向け乍
「負けてなるものか。ここが働き処ぞ。皆、押せ押せ、押し捲れ」
大音声の叱咤が籠められた目差しに、エクの三人は奮い立ち、捲土重来を期し突き進み始めた。対する男爵は流石、百戦錬磨の古強者。好敵手いざご参なれと、その怒濤の様な猛進に単騎なりとも立ち向かおうとする。その雄々しさ、その逞しさに名器の名器たる所以を感じたのは私丈ではないだろう。私はその火花の散る様な凄まじさに圧倒され乍、エクの迸る情熱と男爵の潔さに目頭を熱くした。
 
二つのクァルテットという境を越えた八人の奏者が、持てる全ての力と業を尽くし華々しい終結音を奏し終えた刹那、聴衆の感激が賞賛の嵐となって舞台上の勇者達を襲う。その歓呼は天上を衝き、拍手は驟雨が如く堂内に響き渡った。嘗てこの第一生命ホールで此程迄の喝采があっただろうか。少なくとも私はそれを知らない。

こう云う演奏会に立ち会うと心底草臥れる。然し、此こそ生きた音楽の醍醐味なのだ。私は真っ赤になった掌を握りしめ、気持ちの良い疲労感に浸った。
by tritonmonitor | 2008-06-30 11:29 | SQWシリーズ
<< 6月1日 SQWフェスタ 第3... 5月21日 日本音楽集団の演奏... >>