NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
by tritonmonitor
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
カテゴリ
全体
TANモニターとは
TANについて
TANモニタープロフィール
SQWシリーズ
ライフサイクルコンサート
TAN's Amici コンサート
コミュニティ活動
ロビーコンサート
その他特別コンサート等
レクチャー・セミナー
NEWS
チャットルーム
アドヴェント&クリスマス
未分類
以前の記事
2011年 03月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
フォロー中のブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


カテゴリ:レクチャー・セミナー( 5 )

1月26日(火) 西村朗×クァルテット・エクセルシオ レクチャーコンサート

2010年1月26日(火)19:00
芝浦工業大学豊洲キャンパス テクノプラザ
【報告:S.K/TANサポーター/座席自由】

大学の一講義室での、「N響アワー」の司会をされている西村朗氏と、年間80公演を行うという日本で数少ない常設の弦楽四重奏団クァルテット・エクセルシオによる『実演を交えながらおくる作曲家自身による作品解説』。今は亡き大作曲家たちの作品もこのような作曲家自身によるレクチャーコンサートで心底聞きたいと思った充実した時間でした。

◆前半:「弦楽四重奏のためのヘテロフォニー」(1975~87)
この曲は、西村氏が芸大学生時代の試験や毎日音楽コンクールを経て、エリザベート国際音楽コンクールで大賞を受賞した後も手直しし出版された第1番にあたる弦楽四重奏曲で、ヘテロとは別称で異質なものだそうである。西洋音楽のホモフォニー、ポリフォニーにないもの、ベートーヴェン、バルトーク、ラヴェルの完璧な弦楽四重奏曲にないものを探しヘテロフォニーとし、雅楽の音がずれている、ぶつかっている、調弦が合ってないにも関わらずそれに違和感を持っていない日本人の音楽性がこの曲に取り入られたようだ。

頭の音は落ち着きのあるAの音でなくB♭を、チェロが1番高い開放弦の更にオクターヴ高い音の半音上という位置から鳴らし始める。その1点から出たものから四者四様にうねってまた集まってくる。この異質なものの中にも一元的な流れが存在していて常に流動的である。24音技法で弦楽器の可能性を見込んで4分の1音指定の音まであり、楽譜からは演奏可能だけれど書き取ることが困難な曲を作った。秩序と破壊の繰り返しの後、最後は草の笛、竹の葉のすれる音のような1stヴァイオリンのメロディー、それはヴィブラートをかけて弾くと綺麗なメロディーなのに敢えてなしの指示があり枯れた感じを出して終わる。

◆後半:弦楽四重奏曲第2番「光の波」(1992)
この曲は西村氏がインドネシアのkecakケチャという、数人で全く違うリズムを打っているのに傍には一人が連続したリズムを打っているように聞こえるという、パルスの合同制作から作った曲だそうだ。パルスとはあふれ出るようなリズムのことである。とても超絶技巧の曲でなかなか最後まで崩れないで演奏出来るクァルテットはいないと言っていた。西村氏の曲でよく取り上げられている曲に「6人の打楽器奏者のためのケチャ(1979)」があり、最初にそちらをCDで聞かせていただいてケチャの仕組みを教えてもらった。

第2番は2楽章形式で成り立っており、曲の最後にあたる第2楽章の終わりと第1楽章が重なるように作られている。それは音が上に昇って行くのと下がって行くことで表されていた。第1楽章はこれから出現するものの予兆で、第2楽章で4者が次々に短い音を出し始めて、それは光が飛び交うような光景を表している。hocetホケというしゃっくりしたようなリズムも出てくる。クライマックスに向けて速いテンポで突き刺すようなパルスの連続。東アジアのアレグロ。


今回始まる前は現代曲でどんなに聴くのが難解な曲なのかと想像しましたが、西村氏のテンポの良いユニークな解説と、アジアの音楽に端を発したと言われたからなのか、演奏を聴いてみるとヘテロフォニーの方は不思議な響きも美しく感じましたし、第2番は4人の演奏者のリズムのやり取りにこちらも目も耳も集中して聴くことが出来、入り込んでしまいました。終了後に質問の時間が取られた時も、全くの音楽初心者だという方々が次々に西村氏に質問をしていたことが、私と同じくこの時間虜になった方がたくさんいたということだと思いました。今回の2曲とシュニトケの作品でプログラムを組まれたエクセルシオの皆さんの演奏会も楽しみですし、西村氏は弦楽四重奏曲を第4番まで出版されているということでしたので、第3番、第4番についてもまた実演を交えたレクチャーコンサートをして頂きたいと思いました。
[PR]
by tritonmonitor | 2010-02-01 18:23 | レクチャー・セミナー

TANレクチャーコンサートplus#10レポート

「ショスタコーヴィチの驚くべき裏技」

【報告:井出春夫/会社員、TANサポーター】


8月の最後の土曜日、朝から日射しが強くとても暑い。家を出る足取りは少し重い。毎日今日は何人熱中症で…。なんて話を聞く。でも、勝どき駅を降りて外に出ると海が近いせいか心持ち涼しい感じがする。

 今日は、古典四重奏団によるレクチャー・コンサートである。今年のテーマは「ショスタコーヴィチ」ショスタコーヴィチとといえば昨年、大汗をかきながら、昼と夜第一生命ホールに通ったのが懐かしい。今年は、きっと過ごしやすい気候になっているだろう。

 レクチャー・コンサートが始まる前、会議室に入ってみたら、寒いくらいに冷房がきいている。これは少し寒すぎと感じたが、100人近くのお客さんに埋められた会議室は、丁度良い温度に感じられるようになった。

 毎年、古典四重奏団のレクチャー・コンサートには来るのだけれど、あまり会議室には入らなかったが、毎回「とても面白かった」と聞くととてもうれしい。久しぶりに聞いてみると、話が面白く、肩苦しさがない。そして実際の演奏があって、「ちょっとだけよ」と試食させてもらえる。とても贅沢だなあ。

ショスタコーヴィチは、ソ連誕生前に生まれ、ロシア革命を経験した現代作曲家。19才でデビューし、グラズノフがモーツァルトの再来といったとか。

 ショスタコーヴィチの音楽は、はっきりしていてわかりやすいけど評価は固まっていないそうである。彼の音楽は、誤解をまねいたり、本音をかなり間接的にしかいえなかったり。国家といういじめっ子がいなかったら彼はどんな音楽を書いたのだろうと思う。

 ショスタコーヴィチの弦楽四重奏には、多くの舞曲が使われているんですね。あまり意識して聞いたことはなかったけど。

 内容については、あまりかけないのですが、「面白くてためになる」レクチャー・コンサートで実際にコンサートを聴くのが楽しみです。

古典四重奏団コンサートの詳細はこちら
http://www.triton-arts.net/concert/calendar/200710.html
[PR]
by tritonmonitor | 2007-10-01 13:05 | レクチャー・セミナー

2007年1月20日 番外編:「実は,大人も弾いてみた~い! 弦楽器体験 for TANサポーター」Vol.1

【報告:齋藤健治/月島在住・編集者/TAN会議室より報告】
d0046199_1555698.jpg


「ちょっと,面白い話があるんですよ」
Aさん(サポーター/モニター)は,にこやかに語りながら歩いてきた。
それは昨年の12月13日のコンサートでの幕間でのことであった。

「この前(注:2006年12月1日),佃児童館でクァルテット・エクセルシオのアウトリーチがありましたよね? その時に,“サポーターによる,サポーターのための楽器体験”ができたらいいんじゃないかって……。そんな話が起こってきたんですよ」

この企画の柱は大きく,以下の2つとなる。
1.ヴァイオリンはコンサートでは聴いているが,弾く機会は少ない。大人も愉しめる
2.楽器体験アウトリーチで関わる際の,サポート実用テクニックを学ぶ

「子どもたちはアウトリーチの時に楽器体験をしていますが,その様子を親が羨ましそうに見ているんですよ。大人だって楽器を弾きたいんだ。サポートする側にいて感じていました」と言うのは,サポーターのYさん。

サポーター間の話合いの中から出てきた,サポーターのための楽器体験企画は,このようなきっかけから始まった。

* * *

当日使用した会場は,TAN事務室横の会議室。金銭的な負担がかからずに大きな音を出せること,という視点で選ばれた(開催日は土曜日であるため,事務室横の会議室で十分可能であった)。サポーターによる企画であるが,TANはこうした点からアドバイスを行っていった。
司会進行と指導にあたったのは,前述のAさん,そしてOさん。両氏は大学時代の学生オーケストラの先輩・後輩にあたり,現在でもアマチュアとして演奏活動を継続中。TANのサポーターとしても活躍している。
用意された楽器は,JPモルガンがTANに提供しているヴァイオリンとヴィオラ。それに両氏の愛器が加わった。
プログラムは次の4段階を準備。
1.デモ演奏
2.ヴァイオリンの構え方
3.音を出そう!
4.弓のアップ・ダウン。そしてロング・ボー

楽器演奏には興味があるけれど,触るのは初めてである――,このような層を想定して考えられた内容である。配布された資料についても,初心者向けの解説書をYさんが編集し,楽器の構造,楽器の構え方,弓の使い方,といったものがまとめられていた。

* * *

集まった受講生は,サポーター,TAN職員と,記録者である私を含め,計8名。
スタートは講師によるデモ演奏。Oさんのヴァイオリンによる「愛の挨拶」「アルビノーニのアダージョ」,Aさんのヴィオラによるブラームス弦楽六重奏冒頭が流れる。
いよいよ楽器体験が始まる。
ステージを見る限りでは,肩と顎で楽器をはさめば運指ができるもの……と思いきや,手強い。すかさず講師がかけ寄ってくる。
「ふだんとは体の構造が違ってきますが,指を動かすためには楽器を床と水平に。ほら,今の構え方ですと腕が上がっていますでしょ……。そうそう,そんな感じ」
このように講師は手取り足取り教えている。
「ほらっ! 手を離しても大丈夫。できた!」
と基本通りにヴァイオリンを構えることができた受講生は,ぴょんぴょんと跳びはねている。
続いて弓の使い方を教わった後,開放弦でのアップ・ダウンの練習。
音が鳴る。ぎこちないながらも音が鳴る。受講生は夢中で音を鳴らす。
「ちょっと弓の持ち方を直しましょうか。中指と薬指で握り,親指はかけるように。人さし指と薬指は自由にしておきましょう」
一人ひとりの間を回る講師の指摘を受け,音はいっそう大きくなっていく。

* * *

「まさか,和声まではいかないよねえ」
「時間もないでしょうし」
「そうだよねえ……」
開催1週間前,今回の企画の中心者であるAさん・Yさん,そしてOさんの間では,準備にあたってこのような会話が交わされていた。プログラムの予定時間は16時から17時30分である。
しかし当日の受講生たちのやる気は,このような思惑をはるかに超えていった。
講師の指示によって一人ひとりが和声を構成するトーンをそれぞれに出すことで,部屋の中にアンサンブルが生まれる。
さらに「ド・レ・ミ,を弾きたい」と,企画者たちが予想もしていなかった声があがってきた。音程をならい,たどたどしくではあるが,「ド・レ・ミ」が部屋の中をかけめぐっていった。
「残念ですがお時間となりました」
講師がこう告げても,受講生はなかなか楽器を手放さない。それどころか改めて弾き方をならう姿も見られる。
タイム・アップ。ようやく楽器はケースに戻される。だがそこでも楽器や弓のケアの仕方を教わっている受講生がいる。

* * *

お気に入りの一曲を弾くことができたら……。ふだんは仕事や家事に追われ,そんな余裕を生み出すことは難しいかもしれない。しかし,ほんのちょっと時間をやりくりすることができたら,“自分で音を創る”という,新しい喜びが沸き上がってくるのではないだろうか。
Vol.2も企画進行中とのことだ。
[PR]
by tritonmonitor | 2007-01-30 15:06 | レクチャー・セミナー

10月7日:古典四重奏団レクチャーコンサート plus#9                       

「ドヴォルザークの魅力」
                              
出演:古典四重奏団  特別出演:佐竹由美(ソプラノ)


 仲秋の名月のお株を奪った空模様も一変し、明ければ雲一つ無い日本晴れである。うららかな陽気の下、晴海のそこかしこで見物衆が群れを成している。何だろうと耳を傾けると、三味線、太鼓、チャンチキが聞きなれた三連譜を刻み、そのリズムの上へ、笛の音が、まるで風に煽られた薄紙の様に高低を繰り返のが聞こえる。おやおや、と思いながら見物衆の輪に加わると、中では「天狗連」と染め抜いた揃いの浴衣を片肌脱ぎにした老若男女が、その囃子に合わせ一心不乱と阿波踊りに興じている。「踊る阿房に見る阿房、同じあほなら踊らにゃ損、損」何となく後ろ髪を引かれる思いでトリトンスクエアへ急いだが、当たり前の様にその調子が耳に憑いて離れない。ちゃんかちゃんか、こんにちわ。ちゃんかちゃんか、先日はどうも。結局、「同じ阿房」を引き摺って会場に神輿を据えた。

 古典四重奏団を聴くのは二回目である。その嚆矢は去る七月「ゆふいん音楽祭」でバッハの『フーガの技法』であった。この時も、チェロの田崎さんが演奏前に彼の大曲を聴くに当ってのレクチャーをされていた。勿論演奏も然る事ながら、その口跡は軽妙にして、然し説得力溢れる話術が、お喋りを職業とする私には頗る興味が有ったし、又その気さくな御人柄に親炙させて頂けるのを楽しみに、モニターを志願させて貰った。

 四人の入場の後、間髪入れずドボルザークのスラブ舞曲第一集の第8番が演奏された。この曲は過去に私も練習したことがあるので馴染み深い。「ようこそ、古典四重奏団です」との田崎氏の開口一番は、噺家が出囃子にのって出てきたそれとそっくりである。四重奏団の面々を紹介の後、本題に入る。「このドボルザークという人は、生前から有名であり、それなりの地位もあった方です。ですから・・・女性やお金、貧困に喘いだ事実がないので、我々としては面白みがない」会場に笑いが起こる。それから専門家としての分析に入る訳だが、憎いほどお客の気持ちを掴む術に長けている。随所に散りばめられた「くすぐり」が聴衆を飽させることなく、寧ろ追い風となって益々その語り口を生き生きさせる。まるで全盛期の林家三平師が口演した『源平盛衰記』にさも似たり、といったら笑われるであろうか。

 プログラムと、田崎さんの「高座」が進んで行く。田崎さんのお喋りという「お囃子」に乗った古典四重奏団の演奏するドボルジャークから聞えてくるチェコ特有のリズムが、石川啄木の詩を、まるで彼の生地、岩手渋民村の訛りで聞いているような気がしてきた。その時、はっと気付いた。これが国民楽派の持つ底力なのだと。

 人は土地に生まれ、その土地に育まれる。その成長過程に於いてその産土独特の「気
質」が知らず知らすに身体の奥底に染み込んでいる。即ちそれは地方特有の民謡であったり、味覚であったりする訳だが、譬えその土地から離れようとも、その「気質」は不変であるし、時と共にそれは「郷愁」のへ変化するのは人情である。ドボルジャークにしてみれば祖国を離れ、遥か「新大陸」へと居を移したことにより、それが一層熟成され、名カルテット12番「アメリカ」と
いう曲に結びついたのだ、という事を、アメリカ土着の作曲家、S フォスターの美しい歌曲を引き合いに出し、音楽をも用いて口講指画と説得する古典四重奏団の「芸」には、正直脱帽であった。

 終演後、田崎さんから「どうも、師匠。御無沙汰いたしました」と声を掛けられた時、私は顔が真っ赤になる思いがした。この人が私と畑を異にした「芸人」であることを心から神様に感謝したことは云う迄もない。
[PR]
by tritonmonitor | 2006-11-22 18:17 | レクチャー・セミナー

2005年8月27日(土):<レクチャーコンサートplus#7>古典四重奏団

報告:4列目中央席 小川泰史

古典四重奏団レクチャーコンサート plus#7
「果たしてバルトークはむずかしいか」
第一章~バルトークはどこから来たのか~



私がTANを初めて訪ねたのは今年の7月。今回はサポーターとして2回目の仕事ながらモニターをやらせていただいた。視点は自由ということだったので、今回のレクチャーのテーマ「果たしてバルトークは難しいか」に沿って、どのようにバルトークを理解していったかについて書いていこうと思う。

●開演前

d0046199_15333273.jpg今回、初めて3人のサポーターの方とお会いし、コンサートの準備も手伝うことができた。事務局のみならず、サポーターの方々も手際よく準備していて、TANのボランティアマネジメントが非常にしっかりしていることが印象的だった。

 開場前よりお客様がロビーに集まり始める。配布された資料を熱心に読むなど、心待ちにしていた様子が分かった。開場と共に多くのお客様が来場された。今回のコンサート会場はじゅうたん張りのただの会議室に、椅子が並んでいるだけのシンプルなものである。まるで何かの講演会前のように、会議室に人が集まってくる。約100席を用意していたが、予想以上に人が多く、席を増やさなければならないくらいだったらしい。今回は特に女性が多く(約半数?)、また若者も比較的多かったらしい。

以下、レクチャーの内容が続くが、レクチャーの効果がどれほどのものであったか書くために、レクチャー前の私のバルトーク・イメージについて触れておきたい。

私はよくクラシックを聴き、バルトークもオーケストラ曲を中心によく聴いている。また、中学時代に演奏したこともあり、その時の衝撃は忘れられなかった。激しくリズムとクールな響きが特徴的で、クラシック音楽のカッコ良さ、面白さを教えてくれた作曲家の一人である。しかし、6つの弦楽四重奏曲だけは敬遠していた。特別、前衛的でもなく、オケ曲と同じようにリズム、メロディーは魅力的なのに、よく理解できないといった印象だった。今回来場された方も、多かれ少なかれこのような印象を持っている人が多かったのではないかと思う。

●開演・レクチャーの始まり~旋法と和声について~

d0046199_15345041.jpg
古典四重奏団のチェロ奏者である田崎さんの司会でレクチャーが始まった。田崎さんがおっしゃるには、バルトークの弦楽四重奏曲が難解な曲の代名詞とされる理由は、様々な要素が詰めこまれ、統合されていることにあるらしい。今回のレクチャーでは演奏を織り交ぜつつ、旋法、和声、リズム、対位法(メロディーのからみあい)の4つの軸を中心として、様々な要素をピックアップさせて聴かせることで、バルトークの音楽につかみどころを持たせようという試みであった。

まず旋法についてということで、人気曲である「ルーマニア民俗舞曲」が演奏された。演奏を聴いてまず思ったことは、奏者一人ひとりの音がはっきりと聴き取れたことである。それは、奏者と客席の距離が近いこと、古典四重奏団は暗譜で演奏するため個々のメンバーの動きがよく見えること、また演奏において各々のメンバーが適度に主張し合えるよう気をつけつつアンサンブルしているからかもしれない。

次に、弦楽四重奏曲の中で使われる旋法が演奏された。ハンガリー生まれのバルトークは、ハンガリー、ルーマニア、バルカン半島、北アフリカなど様々な民謡を採取した。彼は自らの作曲において、ただその民謡のメロディーを用いるだけでなく、それを分析・消化することで彼のオリジナルな旋法を発見し、自由自在に扱おうとしたらしい。後でも触れることになるが、バルトークはそのような土着の民謡の分析から、リズム、対位法においても新境地(従来の西洋音楽の枠の中でのことだが)を開いた。

そのような旋法の弦楽四重奏曲第3番の2楽章のメロディーがピックアップされて演奏された。長調、短調でもない、素朴で瑞々しい雰囲気のメロディーであり、どこの国のものかは分からないが、アジアの東に住んでいる私たちが親しんでいるものであったように感じた。

続けて、全パートで同2楽章が演奏された。ここで面白いと思ったのは、メロディーがよく聴こえるかと思っていたのが、むしろ掛け合いやリズムが浮かび上がって聴こえるようになったことであった。旋法というひとつの取っ掛かりができたことで、音楽の全体像が見えたような気がした。レクチャーで細かく音楽を解剖して聴かせた意味の一つはここにあったのだと思う。

次に和声についてのレクチャーとなった。バルトークの6つの弦楽四重奏曲はどれも個性的で、印象派っぽいもの、無調っぽいものなど和声的にも様々なものがある。ここでは、いくつか特徴的な楽章と、それに関連があると思われる作曲家の曲が演奏され、バルトークがどの作曲家から影響を受けたのか、感じてもらおうとする試みがなされた。私が感じた限りでは、ワーグナーの無限旋律より起承転結がはっきりしていて、ドビュッシーの印象主義より泥臭く、ヴェーベルンの音列主義より生気があるような気がした。いずれも、他の作曲家の影響をうけつつも、バルトークの個性がはっきりと現れているように感じることができた。

●レクチャー~リズムと対位法について~

d0046199_1534277.jpg休憩をはさんで、田崎さんと会場との質疑応答の時間となった。田崎さんの説明はとても分かりやすく、会場とのやりとりの中で古典四重奏団との距離が縮まった気がした。このレクチャーが終始明るい雰囲気だったのは、田崎さんの穏やかな人柄に負うことが多いと思う。

このリズムのレクチャーにおいても田崎さんの説明が上手だと思った。ここのレクチャーでは、バルトークがよく用いた変拍子(4・2・3拍子など)を説明するのに、分解したりゆっくりと弾いくことで会場との一緒にリズムを覚えようとする雰囲気が感じられた。また、あるリズムを弾いて「何のリズムだか分かりますか?」と会場に投げかけることで、会場の聴き手に考える時間を与え、レクチャーに参加する気持ちにさせることができたと思う。ワークショップ型のシンポジウムのように、参加者意識を持たせることが上手いと思った。

バルトークは土着の音楽にある不可分なリズムを好んで用い、「西洋の狭い世界の中でのリズムを解き放った」らしい。そのようなリズムが日本の相撲太鼓のリズムとてもよく似ていて、20世紀の音楽が何が新しくて何が古いのか、改めて考えさせるきっかけとなった。
 最後の対位法のレクチャーを受けるあたりでは、だいぶバルトークの音楽がわかるようになった気がした。前に説明した3つの軸すべてを把握できたわけではないが、曲の構造が分かるようになったと思う。

●感じたこと

レクチャーを通して強く印象に残ったことは2つある。
1つは、演奏に対する集中力の高さである。レクチャーコンサートは、言葉で説明する部分と演奏する部分に分かれているのだが、穏やかに説明していた古典四重奏団のメンバーが、いざ演奏を始めるとなると一瞬で切り替え、鬼のような集中力で弾ききってしまう。これは、普段ホールで演奏する奏者がどれほどテンションで音楽に向かっているのか垣間見ることでき、クラシック音楽の面白さをさらに感じることができた。

もう1つは、音楽は頭だけで理解するものではない、ということである。理論的なレクチャーを受けた後に書くのは、恐縮なのだが、レクチャーの最後やった弦楽四重奏曲第3番第3楽章を聴いた瞬間、今までのレクチャーで教わったことをすべて忘れてしまった。和声とか対位法とかを通り越して、音楽全体のエネルギーにやられてしまい、頭が真っ白になるほど集中して聴いてしまったのだった。

これはもしかしたら、このレクチャーを通してバルトークへの理解が深まり、曲の全体像に感動することができたのかもしれないし、もしかしたら、「ホンモノの音楽は理論を超えても感動するものだ」ということに気づかせてくれるための、田崎さんからの隠されたメッセージだったのかもしれない。

このような巧妙なレクチャーにはまってしまった私は、「果たしてバルトークはむずかしいか」の問いに対して「NO」と言えるし、会場の皆さまの満足した顔を見たところ、同じことを感じた人は多かったのではないかと思う。これから始まる古典四重奏団のホールでの演奏がとても楽しみになったレクチャーコンサートであった。
[PR]
by tritonmonitor | 2005-08-29 14:36 | レクチャー・セミナー