NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
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2005年7月16日(土):オープンハウス

6回目のオープンハウス~TANにとって一番大事なのは何か

【報告:渡辺和/音楽ジャーナリスト】



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トリトンアーツネットワークが主催する第一生命ホールのオープンハウスは、今回で6度目だそうだ。チラシにも広告にも、そんなことどこにも書いてないけど、ディレクターによればそういうことらしい。ホールがオープンしたのは2001年11月半ばだが、オープン前に2度行っている。そのときも、ホールのハードウェアを支える管理側スタッフが行ったのではなく、既にサポーター主導のイベントと位置づけられていたそうだ。最初のオープンハウスから今回まで、続けて参加している古参サポーターもいるとのこと。

このところ、本当にこの数ヶ月という感じなのだが、東京圏の公共民間音楽ホールのあちこちが、オープンハウスやらそれに準ずるイベントを行うようになった。それらは第一生命ホールのオープンハウスを参考にしたり、意識している部分もあるように見受けられる。去る4月にオープンハウスを行ったサントリーホールで、ホールツアーをしていた若いスタッフは、トリトンアーツネットワークで大学院時代のインターンを行っていた。ボランティア参加による地域密着型ホール運営のノウハウを間近で見ていた彼女は、見事に難関突破して現在サントリーホールスタッフとして活躍中である。

東京ではあり得なかった音楽ホールと人々の関係性を模索し、ときにはスタッフを提供し、日本での芸術受容のあり方を改革していこうというこの文化サービスNPO。遠大にして無謀とも思えるその目的は、わずかづつとはいえ、着実に実を結び始めているようだ。

 以上で結論になのだけど、いくらなんでももう少し具体的に記さねばなるまい。とはいえ、個々のイベントについては別のレポートもあるのだろう。だから以下は、あくまでも「オープンハウスというイベントはどういう仕掛けで行われているのか」というアートマネージメントの視点から眺めさせていただく。悪しからず。

 今年の第一生命ホール・オープンハウスでは、「踊り」というテーマが明快に前面に押し出された。伝統的なクラシックバレエ、愛知万博で来日中のスロヴァキア少年舞踏団、繊細なばかりではないインド舞踏が、ホール、ロビー、ホール真下のエンタランス、練習室などで、複数のステージを行う。「クァルテットのライブが伴奏する本格的なクラシックバレエが全体のメインに据え、周辺に様々にイベントが散りばめられる」という、はっきりとした構成を感じさせるイベント展開だ。年末のアドヴェント・セミナー参加者で結成された弦楽四重奏が舞踏の伴奏をし、さらにワンステージながらロビーでグラズノフのクァルテット作品を弾くミニコンサートも用意されるなど、TANの最重要テーマがさりげなく盛り込まれているのも、テーマ性が明快なこのNPOらしい。

 6回目ともなると、ボランティアで参加し、企画から当日の運営までを仕切っている50名以上のサポーターの動きも、堂に入ったものになっている。自分が何をすべきかきちんと判っており、誰が指示をせずとも、自然とやるべきことをやっている。先生にあれをやれこれをやれと言われないとやらない子供の集まりではないのだ。
 サポーターの中には、TANの他のイベントでこの組織に関わった顔ぶれがいくつも見える。ティーンエイジャー・コンサートのスタッフだった高校生など、なんとも堂に入った舞台裏の動きっぷりだ。年に一度の大イベントとあってサポーターの人数も多く、サポーター同士のリユニオンが行われるようになっている。もうひとつ、ホールを管理している第一生命不動産部の若者らが、このときとばかりに普段は関われないホールの中身の活動に自主的に関与してくれたことは、特記すべきだろう
 TANというNPOのオソロシイところは、地域住民でござい、という顔でさりげなく参加している紳士が、実は大手広告代理店で億単位のイベントを仕切っているプロ中のプロだったりするところにある。ボランティア参加している現役バリバリの広報マンが、まるで操る風もなく自在にボランティアを操っている様は、若く経験もこれから積まねばならぬTANの専任スタッフは足下にも及ばない手練れの巨匠芸。そういう人がひとりやふたりではないのが、地方の公共ホールでのイベントと、東京のど真ん中にあるTANのイベントとの違いかもしれない。端から眺めているだけでも、TANというNPOにとってのサポーターは、音楽事務所にとっての演奏家と同じほど大事な資源なのである、という事実を痛感させられる。
 自分よりも遙かに経験も実績もあるプロがボランティアとして動くのを相手にせねばならないなど、NPO職員にとってはとても難しい状況ではあろう。なにしろ単に「音楽業界ノリ」ではすまされないのだ。そもそも、どこの公共ホールなどでも、ボランティア対応は、その部署で最も有能な人材が専任にならねばならないほど大変で微妙な仕事。「音楽事務所」や「音楽業界」の日常仕事をやりながら、一方でこのような難しい仕事を日常的にこなさねばならぬのだから、TAN職員に求められる資質は極めて高いものとならざるをえない。
 逆に言えば、普通の文化財団職員ではなかなか経験し尽くせない、TANならではの経験がここにある。この場で経験を積めば、どこにいっても怖くないのだろう。なんにせよ、おもしろい組織ができてしまったものだ。

 今年からは、NPOが定款で謳っていた中央区の地域文化振興だけでなく、急速に人口が増えている豊洲方面への展開や、江東区が運営する公共ホールのティアラこうとうとの協力関係も始まったとのこと。NPOと近隣区財団との関わりは、今後の課題だろう。

 夏の午後に約千人が訪れたという今年のオープンハウス、狭い練習室に溢れるほど人を詰め込み、みなが手を取り踊りまくったスロヴァキア舞踏で幕を閉じた。「最後のステージなので、お客さんが誰もいなくなってしまうかもしれません。手空きの方は5時には練習室に行ってください」などと朝の集合時間にはサポーターへの通達も出ていたのだけど、そんなもの不要なほどの盛況ぶりである。踊りの輪に入った中から、来年は踊りを準備する側に加わる人がどのくらい生まれるのかしら。
アマチュアのイベント屋ごっこではないTANのオープンハウスは、成功かどうかは入場者数で決まるのではない。このオープンハウスを経験し、来年はサポーターになろうと思う人がどれだけいるかこそ、真の評価なのだ。


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※渡辺和さんには、レポートのほか写真撮影にもご協力を頂きました。 TAN・WEB編集部
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by tritonmonitor | 2005-07-27 14:52

TANモニタープロフィール:渡辺和(わたなべやわら)

1-お名前
渡辺和(わたなべやわら)

2-ご所属

フリーの文筆業、音楽ジャーナリスト。

3-音楽、または音楽以外の関心事

街やコミュニティがどうやって成り立っているかを、あちこちから見物すること。

自分が子供の頃に喜んでいたガジェット系文化が世界中に広まっている様子を観察し、感動したり呆れたりすること(結果として、我が家にはリジョンコード1DVDやらPAL仕様VHSヴィデオでの日本の怪獣映画やアニメが山積みになっている)。

世界B~C級グルメ探索、中でも餃子(正確には日本の焼餃子ではなく、世界中に多彩な姿で広がるダンプリング)及び世界一旨い食い物と信じるシンガポール風チキンライスを専門とする(趣味というより、単身での行動が基本の外国取材で食いつなぐかの必要に迫られての関心である)。

4-自己紹介

1957年、千葉県生。国際基督教大学教養学部を経て、1986年同大学院比較文化研究化修士課程修了。比較宗教表現論専攻(修士論文『ゼカリアの黙示表現を巡って』)。学部時代から、アマチュア合唱団や教会聖歌隊などを対象に、宗教音楽等のレクチャーを行う。大学院修了後は宗教音楽、室内楽を中心に、演奏会プログラム執筆(新日本フィル定期演奏会、サイトウキネン音楽祭、など)、音楽芸術関係エッセイ執筆、演奏家インタビュー、翻訳、通訳(アマデウス弦楽四重奏マスタークラスでのレッスン通訳、など)、など、フリー音楽ジャーナリストとして活動。コンクール、音楽祭、シンポジウムなど、海外取材多数。92年以降、ゆふいん音楽祭に広報スタッフとして参加。97年以降、カナダ・オタワで隔年開催される国際弦楽四重奏シンポジウム評論家部会に招聘される。99年メルボルン国際室内楽コンクールに、国際ジャーナリスト
賞選考委員として参加。聴衆拡大プログラム「仲道郁代の音楽学校」創設に参加、02年まで台本構成協力。『音楽の友』、『ストリング』、"The Strad"『教育音楽小学版』、『カザルスホール・フレンズ』、日本室内楽振興財団機関誌『奏』、東京芸術大学広報誌『藝大通信』、東京都交響楽団月刊『都響』、Fuji-tv ART NETなどに寄稿。TANクァルテット・ウェンズディ・シリーズ及びTANモニター立ち上げに企画アドヴァイザーとして関与。

以下、非公式プロフィル

佃2丁目町会第23班の班長として、思い重責を担いつつ、なんとか貧乏長屋生活の日々を暮らしております。年間にトータルで3ヶ月くらいは家にいない奴が、町内会班長なんてやっていいのか、と思うのでありますが。第一生命ホールまでは幸いにして自転車で5分、徒歩10分。おかげで、TANのイベントには文字通りサンダル履きで通ってます。

どこにも所属していないフリーのジャーナリストですので、自由といえば自由、でも猛烈に不安定。収入の半分は物納ではないかとすら思える。特に、21世紀に入ってからは音楽出版業界ではハードな単行本を出せるような状況ではなくなってきているので、長期の取材時間とある程度以上のボリュームが必要な小生のような長編タイプの書き手は、どう生きていったらいいのか未だに判らず。うううん。

ウェブログ: http://blog.so-net.ne.jp/yakupen/

5-TANモニター開始日

記憶は定かではないが、おそらくは2001年のオープニングシリーズのどれか。なにを隠そう、NPOの自己評価のあり方として、TANが行うイベントをリポートする書き手をサポーターとして関与することが出来ないか、と言い出したひとりです。当初の構想では「若手音楽ジャーナリスト・評論家養成コース」的な趣で(※)、TANモニターの最初の仮名は「晴海・虎の穴」と申したのですぞ。これホント。


※現在は、音楽ジャーナリスト・評論家を目指す方のみならず、様々な方にご参加いただいておりますので、是非お気軽にお尋ねください。 TAN・WEB編集部 
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by tritonmonitor | 2005-07-27 14:43 | TANモニタープロフィール

レポートお楽しみに!

オープンハウスに参加してくださった、サポーターの皆さま、そして会場にいらしてくださった1061名のお客様、どうもありがとうございました!

間もなく、ティーンズスタッフ(ティーンエイジャーコンサートスタッフ)や今回はじめて参加くださったサポーターさん、そしてお客様からのレポートが届きますので、ぜひぜひお楽しみに!

又のぞきにいらしてくださいね。

TAN・WEB編集部
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by tritonmonitor | 2005-07-21 14:54

【NEWS】タリス・スコラーズ来日公演が、NHK衛星放送でご覧いただけます。

6月30日(木)に行なわれましたタリス・スコラーズ トマス・タリス生誕500年記念第2夜の模様が、NHKハイビジョン放送・BS放送にてご覧いただけます。ハイビジョン放映日は、9/5(月) 朝8:00~8:55です。BS放送での放映日に関しては決まり次第お伝えいたします。是非お楽しみください。

TAN・WEB編集部
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by tritonmonitor | 2005-07-07 11:42 | NEWS

2005年6月30日(木):タリス・スコラーズ(第2夜)

【須藤久貴/大学院生/1階8列20番より報告】

d0046199_1049987.jpg 恥ずかしい話だが、寡聞にしてタリス・スコラーズが何であるのか今まで知らなかった。

 ホールに行って初めて、何かいつもとは違う雰囲気を感じ取った。開場時間前にはすでにエスカレーター下まで並ぶ人の列、聴衆の多さ、タリスの楽譜を手に取り次々と買っていく人。座席につけば、後ろの人が小声で隣の人に歌いながら曲目を解説している! そして何台ものテレビカメラ。会場はタリスを既によく知った人たちが多く集まっているようだ。

 「イギリスの音楽Ⅱ」と題された当夜のコンサートは、タリス、タヴァナー、シェッパードとバードの宗教曲がアカペラで歌われた。もちろんラテン語。

 合唱は素晴らしかった。まるで乱れることなく整っていて、音程があいまいになることもない。音の強弱(ディナーミク)のレンジの広さにも驚いてしまった。タリス<われは天の声を聞きぬ>の後半でピーター・フィリップス氏の指揮する身ぶりが激しくなるにつれ、クレッシェンドしていく合唱のきわめて強い表現は、意外な印象を受けた。プログラム表紙に描かれている中世の聖人画にあるような、表情のあまり見えない絵(ある意味で能面のような顔)のイメージを予想して聴いていると、しっぺ返しを食らうかのようである。

 タリスの表現は均整を持ちつつ壮絶であり、合わせて10人で歌っているとは思えないほど圧倒的な力で私たち聴衆に迫ってくる。それぞれが雄弁に語っていて、たとえばバスのフランシス・スティール氏は落ち着いた低音を響かせ、強調したいフレーズを客席に顔を向き直して、聴いてくださいと主張しているかのようだった。そして時折、ソプラノが厚い内声の層から飛び出して、極めて高音のロングトーンを聴かせてくれる。何度もハッとさせられるような美しい瞬間の連続であった。

 プログラム後半はミサの通常文を並べたもので、タリスの<グローリア>は壮麗で迫力に満ちたものであった。アンコールは、パーセルの宗教曲が歌われた。時代が違うと(あるいはラテン語でなく英語になると)響き方がずいぶん変わる。

 アンコールの後も拍手がなかなか鳴り止まず、とても聴衆の反応はよかった。私自身はルネサンスの教会音楽を全然知らないが、もう少し知識と「慣れ」があれば、単に美しい声に感嘆するばかりでなく、今後もっと楽しめるのではないかと思う。
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by tritonmonitor | 2005-07-07 01:56 | TAN's Amici コンサート

【NEWS】2004年度のTANモニターレポートをご覧いただけます

トリトン・アーツ・ネットワークが過去に開催したコンサートの様子は、過去のコンサートモニターレポートよりご覧いただけます。

こちらよりご覧ください。→2004年度TANモニレポート
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by tritonmonitor | 2005-07-06 11:02 | NEWS

2005年6月24日(金):漆原朝子&迫昭嘉 デュオ・リサイタル ~ベートーヴェン・プログラム~

【須藤久貴/大学院生/1階10列32番より報告】

 何とよい選曲だろうと思う。ベートーヴェンの「春」と「クロイツェル」と言えば、クラシック・ファンなら、一度は夢中になって何度も録音を聴いた経験を持っているだろう。あまり知られていない名曲を聴くときの感動は大きいけれど、誰でも知っている名曲もやっぱり聴いてみたくなる。それも素晴らしい演奏家の手によって!

 漆原朝子さんは、ソナタを一曲一曲それぞれ別個のものとして弾いてはいないように思える。三曲のソナタは絡み合っていて、あたかも大きなひとつの大曲であるかのように、全体が俯瞰された演奏である。「クロイツェル」第1楽章の頂点へと用意周到に計算されていたことは、当夜の演奏を聴いたものなら得心されるに違いない。

 迫昭嘉さんの伴奏は、極めて抑制された控えめな漆原さんに終始合わせているようだった。迫さんに師事している友人は、「以前聴いた伴奏ではかなり激しかったので、今回はだいぶ違っていて意外でした」と話していた。

 初めに≪ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第5番ヘ長調Op.24「春」≫が演奏された。第1楽章では、高みへと上っていく音型と高みから深い底へ下っていく音型との対比が明確に強調されていた。漆原さんのヴァイオリンが上へ上へと向かっていくと、それを迫さんのピアノが一音で断ち切り、そして下っていく。何という好ましい緊張感だろう。また、春の暖かさが戻ってくるような第4楽章はとても率直で、抑えつけてしまうよりは春の晴れやかさをいっぱいに謳歌しているかのようだった。ニ短調に変わったところで漆原さんが音を抑制したのは、彼女らしい対比の妙技だろう。

 有名な二つのソナタに挟まれて演奏された≪第8番ト長調Op.30-3≫を聴くと、第2楽章が弾きたくてこの曲を選んだのだろうなあ、と思えてきた。緩急の対比の鮮やかな演奏で、この変奏曲がゆっくりと四分音符で演奏されたかと思うと、十六分音符に変わる。迫さんのピアノも重く三連符を引きずっていたのが、勢いを取り戻した川の水のように流れていく。風がふっと吹き込んで心を軽やかにさせてくれる。

 後半の≪第9番イ長調Op.47「クロイツェル」≫の第1楽章は、まさにこの日の演奏の頂点だった。ホ短調に転調し強くピアノが旋律を弾き、それに呼応するヴァイオリンがピツィカートで楔を打ち込む。それに続いて高音の16分音符を激しくかき鳴らす。壮絶なまでの真摯さがある。漆原さんは今までの抑制を離れ、ここぞとばかりに弾き切った。

「クロイツェル」は、「春」のように気持ちが晴れやかになり心が暖まるというような類の音楽ではない。聴く者の眉間にしわを寄せさせ、深刻にさせずにはおかない音楽である。この「本気さ」というものが漆原さんの音からは滲み出ていた。

 しかしこの壮絶さには救いがある。穏やかな第2楽章の変奏曲の中に、落ち着いた漆原さんの音を聴いたとき、緊張が緩和する思いがした。

 三年前に神戸の松方ホールでシューマン全曲演奏会を聴いた折に、二つのソナタのあとに≪3つのロマンス≫が演奏された。意外なまでにあっさりした表現と、続いて最後に弾かれた≪第2番≫の激しさの対比に感嘆したことがあったが、当夜の演奏会も、緩急あるいは解放と抑制の対照性のはっきりと現れた演奏であったと思う。


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【TAN編集部より】

須藤さんのレポート文中にありました、3年前の神戸・松方ホールでのシューマン「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」全曲演奏会と同プログラムにて2006年の七夕に第一生命ホールで「ロベルト・シューマン没後150周年記念 漆原朝子&迫昭嘉のシューマン~ヴァイオリンとピアノのためのソナタ全3曲&3つのロマンス~」演奏会を開催します!孤独の中から生み出された真摯で高貴な、そして純粋な魂の結晶を、時代を超え二人の名演奏家があなたの心に届けます。是非ご期待ください。 

詳細はTANウェブサイトで随時お知らせいたしますのでお楽しみに!
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チラシの拡大画像は→こちら
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by tritonmonitor | 2005-07-06 04:00 | TAN's Amici コンサート

2005年6月24日(金)漆原朝子&迫昭嘉デュオリサイタル~ベートーヴェン・プログラム~

【1F10-31 佐々木久枝(中央区勤務)】

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あれから幾程の月日が流れたのでしょうか。ベートーヴェンを体系的に聴けたピアノソナタ全曲演奏会での興奮が昨日のように思い出されました。





「春」
ヴァイオリンがやや早め早めに弾き進めていく中を艶っぽくピアノがメロディを受け取る時のまろやかさ。この最初の音にして当夜の演奏の魅力を充分予感させてくれました。第1主題リピート直前のスケールが軽めに流され、分散和音の部分もやや抑揚を付していたよう。ハ短調2度目のヴァイオリンはホールの響きに慣れてきたようで、安心して聴けました。展開部3連音をキャッチボールするあたりはピアノがどっしり構えてなかなか面白い演奏。再現部のピアノがまろやかに続く対話の部分もピアノがカーンと澄み切った音色。(ちょうどここでペライアのリスト演奏を思い返したのですが)この瑞々しさが身上ともいえる彼の美点だと思います。コーダ部分はややテンポを落として次楽章を予感させそうな結び。

第2楽章ではピアノ協奏曲「皇帝」やテンペスト等の中間楽章でも聴かせた穏やかで深いピアノが潤いを帯びて歌いかけるのにヴァイオリンもサポート。ややもするとその単調さ故に無味乾燥な演奏になりがちですが、ピアノ左手和音が題名どおり春の穏やかな、染み入るような調べを弾き出していました。ピアノが両手を交差するような部分でもヴァイオリンが穏やかに刻んでいました。
第3楽章では裏拍もしっかりと食いついており、フォルテのヴァイオリンの細やかな刻みも巧みでした。ユーモラスながらもしっかりポイントを押さえた演奏だったと思います。
第4楽章では瑞々しさが全面に溢れており、どちらかといえばはっきり粒立ちの見えるピアノと横に流れていくようなヴァイオリンとの織り成す音の織物を見ているよう。ディナミクの付し方が自然なのが印象的でした。途中ニ短調部分でややヴァイオリンが走りかけるようだったのですが、むしろここではそのくらいの方が楽想的にちょうどよかったかもしれません。ピアノがニ長調に一瞬入ったところはヴァイオリンのようにやや動きを抑えていましたが、その後テーマではその弾むようなリズムが魅力的。裏拍からテーマを引き出すような弾き口でした。ヴァイオリンの付点が上品な躍動感を発揮、フィナーレでは何故かヴェルディの歌曲を思わせる高揚感を見せてくれました。

「第8番」
第1楽章ではオペラの序曲を思わせるようなピアノのペダル響きを多用しない落ち着いた響きで、そこへトリルが小気味良く加わっていました。途中展開していく中での強弱のメリハリが鮮やかで、フォルテは鋭い角度で細かく刻んでおり、展開部ではトリルのキャッチボールを繰り返しつつ、小気味良く展開していきました。ピアノのメロディラインを強調したところが細かくメリハリを付けておりました。
第2楽章では「狩」ソナタ3楽章を思わせる穏やかで歌うような中にヴァイオリンが旋律をたっぷりと歌い、続いてピアノも甘美に歌い進めていました。この部分はこの日の白眉とも呼べるものだったと思います。途中ズンチャッチャと3拍子を思わせる節を刻むところのピアノの懐の大きさ。コラールを思わせる清らかさに満ちたヴァイオリンに寄り添うように弾かれるピアノ。迫さんならではの美点が発揮されていました。
第3楽章ではディヴェルティメントを思わせるような躍動感に満ちたものでした。この動きに満ちた曲想の裏には苦難にあって前に進もうとしている作曲者の姿をも浮かばれ、ピアノ低音部分からは一歩一歩踏みしめていく確固たる存在を描く演奏が伝わってきました。

「クロイツェル」
第1楽章では冒頭のヴァイオリンのカデンツァに続いてシャコンヌの弾き口でたっぷりと歌い出されるヴァイオリンにピアノは落ち着いた演奏で応答。フォルテではおなじみのテーマが新鮮で拍の途中でもヴァイオリンがよく音に食い付いていました。細かく動く部分も気後れなぞせず、前へ前へと突き進んでいくさまが伝わってきました。緩やかな高音の歌と次の瞬間ペダルを過度に使わないピアノの生のダイレクトな重量感が対等に渡り合っており、ヴァイオリンのテンポの変わり目変わり目でもよく集中していました。2度目のフォルテ部分はややヴァイオリンが走っていたように感じましたが、当時としてはこの破天荒さがある種魅力的だったのでしょう。両者のユニゾンも小気味良く、ピアノの一瞬の静寂を突き破るコーダの怒涛は圧巻でした。

第2楽章では穏やかなメロディが気の届いたピアノのよく響かせかつ粒の揃った弾き口で発揮。一転してピアノの軽やかな装飾音に呼応するヴァイオリン。音による対話を思い起こさせてくれました。更に細分化した音の上下自体に動くスケールが感じられ、音と音との間の受け渡し部分も微分音的な移ろいも一瞬聴こえてきたりして、非常にユーモラスな内容でした。一転して憂い漂う部分ではヴァイオリンも切々とした歌い口。特に高音部分での歌が印象的でした。と共にピアノのきらめきがまた哀愁をそそりました。ピアノのトリルとピツィカートに乗って自由に展開しているヴァイオリン、更にヴァイオリンからピアノへ受け渡す3連符風フレーズも滑らかな響き。ピアノによる幻想的な雰囲気から一転、小刻みに動く部分では音楽の雰囲気を大切にしかつ丁寧に弾き進めていました。コーダでは特にヴァイオリンのたっぷりとした歌い方が印象的。
第3楽章では一転して華やか。静と動のメリハリが効果的に付いていました。ピアノの指もよく回っており、ピアノとヴァイオリンとが良い意味でぶつかり合っていました。展開部では更にヴァイオリンの細やかな弓さばきがピアノの熱情を思わせるよう。重音が非常に美しく、熱いながらも快感の悦楽感に浸る事が出来ました。この両者は強弱のみならず緩急のメリハリも充分発揮しておりました。

今風に申せば異楽器間のコラボ。主旋律が回る順番はあれども、ピアノはヴァイオリンの伴奏ではなく、あくまでも対等な立場。ヴァイオリンソナタではなく「ピアノとヴァイオリンのための」と併記されるのは至極もっともな事でしょう。
迫・漆原人気は相当なものがあり、私も当夜漆原さんのサインをいただけて幸甚。見ればホールはどこもかしこもサイン待ちの聴衆でごった返していました。一連のツィクルスを果たして尚、進化を続ける迫さんと穏やかな語り口と一音一音に集中する演奏姿勢が魅力の漆原さん。室内楽での共演を含め、今後も機会があったらまた聴いてみたいものです。
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by tritonmonitor | 2005-07-06 02:44 | TAN's Amici コンサート

TANモニタープロフィール:山白真代(やまはくまさよ)

1-お名前

 山白(やまはく) 真代(まさよ)

2-ご所属

 主婦らしくない!?主婦

3-音楽、または音楽以外の関心事

 音楽を中心に、芸術・文化と関わる事が大好きです。
 アートを通じて、人の偉大さと温かさ、優しさ等を生で触れられた時は
 最高に幸せを感じます。
 後は、最近東京に住み始めたので、時間があれば街の探索に出かけ、
 なにかしらの新発見!?を楽しんでおります。
 

4-自己紹介
 
 昨年の12月に、結婚をきっかけに奈良から東京にやってきました。
 結婚前は、奈良県の公立ホールで音楽関係の公演を中心にホールでのお仕事
 を7年程していたのと、幼稚園から大人の方までの生徒さんに、
 自宅でピアノの指導をしていました。
 また、中学、高校と吹奏楽部に所属し、フルートを演奏してました。
 今、振り返ってみると、私の近くには常に音楽があったように思います。

 これまで、奈良を出た事のなかった私が東京に住むなんて、予期していない出来事。
 忙しい毎日から一変し、一体どんな生活になるのか・・・
 全く想像も出来ずにこちらにやってきました。

 新居の近くを見渡せば、第一生命ホールがあり、しかも自転車で行ける距離。
 以前からお世話になっているK玉さんとM口さんもいらっしゃるホール。
 これは、行くしかない!と、ホールサポーターの門を叩き、
 お手伝いさせて頂く事になりました。
 (実は、主人と初めてのデートがこの第一生命ホールでした)

 やっぱり、ホールはいいですね。独特の魅力!
 私にとって、刺激があり、一番落ち着く場所かもしれません。
 ホールで、関西弁で話ながら、バタバタしているのが私だと思います(笑)
 
 5-TANモニター開始日

 2004年12月22日 第一生命ホール ロビーコンサート第19回
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by tritonmonitor | 2005-07-01 15:54 | TANモニタープロフィール

7月1日(金)第一生命ホールロビーコンサート第20回 

ロビーコンサート第20回 
出演:藤原真理(チェロ) 倉戸テル(ピアノ)


【報告:山白真代/サポーター】


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ポツリ、ポツリ。薄曇った雨もようのランチタイムに、2005年最初のロビーコンサートが行われました。今日のアーティストは、チェリストの藤原真理さん。半年ぶりのロビコン登場です。入り口では、音楽で過ごすひとときを心待ちにされている人たちが開演前から列を連ねています。
演奏が始まる前に立ち見(立ち聴!?)も出る程、たくさんの人で埋め尽くされました。
私にとって、ロビコンは3回目のお手伝いとなります。回を重ねるごとにお客様が増えているのは、本当にうれしい限り。久しぶりのロビコンという事、人気の高い藤原真理さんの演奏という事、そして、このロビコンが街のみなさんに定着してきた事のあらわれだと思います。演奏を聴こうと思っている人やふらっと立ち寄った人、誘われてきた人等、いろんな人たちが集うのもロビーコンサートならではの魅力ですね。

この日の演奏プログラムは、ロマンティックで華やかなメロディーで綴るベートーヴェン作曲の「魔笛」の主題による七つの変奏曲。そして、シンプルで飾りのないバッハ作曲の無伴奏チェロ組曲。全く違ったタイプの2曲だったので、それぞれの曲の持つチェロの魅力が存分に感じられ、短い時間の中での充実した演奏会を楽しみました。また、曲の間に入る、藤原さんの優しく落ち着いた語り口と笑いを誘うお話が、更に会場の雰囲気を和ませてくれます。

しとしと降る雨の音を感じながら、お二人の生きた音を間近に触れるという心地よい贅沢な時間。チェロの音色にぴったり寄り添うピアノ。チェロとピアノで紡ぎだすお二人の世界にどんどん引き込まれていきます。目を閉じて、心を澄まして聞いている方。じっとチェロとピアノに釘付けになり集中して聴いてらっしゃる方・・・。時間を忘れ、1日の中の束の間の夢の時間をそれぞれの中で楽しんでいらっしゃるご様子。

コンサートが終わりに近づくにつれ、アーティストとお客様の心の距離が縮まってゆくのが会場の中で、不思議と感じられました。

プログラム演奏が終了。この幸せな時間に浸っていたいという思いのこもったお客様からの拍手。その期待に応えるように、アンコール2曲演奏という大サービス付き。お客様も大満足のコンサートだったと思います。

ロビーコンサートは、これから日常に戻る心のビタミン剤。そんな潤いあるひとときにいらっしゃいませんか。次のロビコンは、10月24日です。ご来場、お待ちしております。
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by tritonmonitor | 2005-07-01 14:24