NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
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クラシックはじめのいっぽvol.15 バリトン~宮本益光~

7月30日(木)11:30開演
【報告:荒木紀子/中央区在勤 2階L1列3番】

夏休み真っ盛りの中、7月の「はじめのいっぽ」は夏休みにふさわしく、親子向けに、誰にでもなじみのある曲の数々を聴ける演奏会だと期待して会場に向かった。


◆宮本益光と音楽の原点
最初の挨拶から軽やかな歌声を響かせたのは、さすがバリトン歌手、宮本益光。スタンダードな曲名が並ぶプログラムの一曲目は、音楽の授業ではおなじみの「浜辺の歌」。舞台上の力強い空気が観客席の後ろまで押し寄せる。

宮本は、音楽の道に進むことになった原点が教員になりたかったこと、また数々の小中学校へ授業をしに行ったエピソードも紹介した。そのエピソードはどんどんふくらみ、観客を宮本ワールドへ誘う。

話は林古渓の詞の変遷や正しい発声方法、詞の表現方法にまで及び、しまいには観客全員が一緒に発声練習を始め、すっかり宮本ワールド、いや宮本先生の音楽室に紛れ込んでしまったかのようだ。

二曲目は本日のピアニスト、加藤昌則が作曲した「さくらつぼみ」。
宮本はしっかりと安定した歌声と軽やかなトークで、一曲ずつ歌の背景を紹介していく。たえず観客の笑いのつぼを心得、舞台にひきこませることを忘れない、正真正銘のエンターテイナーなのだ。

三曲目は童謡でおなじみの「ぞうさん」。
しかし、この曲も宮本の手にかかると、単に子どもの歌というだけにとどまらない。小学校で子どもによく問いかけられた「どうやったら上手く歌えるの?」という質問への答えを通して、歌の世界へのアプローチ方法を教えてくれる。

「ぞうさん」の歌詞は誰が、どうやって言っているのか、その情景を思い浮かべると、1フレーズごとの歌詞の歌い方も劇的に変わってくる。それを観客全員一緒に歌い、実演までしてしまったのだ。これには誰でも眼からウロコだ。

宮本が音楽を通してつながることできたのは子どもばかりではない。子どもを通し、その両親に触れ合うことも増えたのだそうだ。そんな親への想いをこめて自作したのが「パパとママのうた」。大人のための子守唄のようなやさしいメロディーと詞の世界が広がる。

そして、再び加藤の曲「あくびの唄」。
ここで宮本が正しい歌い方の第二弾を伝授。「あくびをする時、発声をする上で理想的なのどの開き方をしている」とはよく言われるが、この曲はその発声方法を実演するために作られた曲なのだ。

観客全員、ためらう間もなく発声練習に突入。またもや会場こぞっての大コーラスとなった。


◆新曲誕生の現場を目撃!
宮本先生仕込みの発声練習を終えると、今度は宮本がこっそり企画した、プログラムにはない余興が始まった。そう遠くない将来に、大作曲家と名を連ねるはずの加藤氏に、即興で作曲をしてもらおうというものだった。

宮本が会場からの要望をまとめて、「ミ・ファ・ラの3つの音をモチーフにして作曲をするように」とお題を出すと、加藤の指が新しい音を探り出すように、鍵盤の上を滑り出した。

会場内が固唾を呑む中、まるで魔術師のように、美しく、物悲しく、そして楽しいメロディーが、ゆっくりと助走をつけながら紡ぎだされていく。曲を変調させながら、JAZZのようなアレンジと即興性で味付けされ、今生まれたばかりのメロディーは次第に熱と力を帯びて、感極まったところで見事な独奏は終わった。

それは、観客全員が音楽の誕生するまさにその瞬間を目撃した、甘美で不思議な体験だった。


◆トリトン・オペラ劇場~子守唄
コンサートの後半、宮本の歌声はさらに豊かにホールに響き渡る。ホールの後ろから登場した宮本は、自作(?)の鳥刺しカチューシャを頭に飾り、モーツァルトの歌劇「魔笛」から「オイラは鳥刺し」のアリアを歌い出す。
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前半までの音楽の先生がガラッと変わってバリトン歌手兼演者に変身する。尻軽男(!)のパパゲーノを軽やかな動きと伸びやかな声で演じ、時代を超えてどの男性も内面に持つ願望を素直に、愛嬌溢れる形で歌い上げた。

宮本は、自身の思い出話や冗談を交えながら、音楽が家庭に溢れていることの必要さ、大切さを語った。子どもが一番最初に聴く音楽、それは子守唄なのだ。   

山本正美の「ねむの木の子守唄」、「シューベルトの子守唄」、どちらも子どもを優しく包み込み、子守唄を聴く子どもは、その心地よくやわらかい音楽の腕の中に抱きかかえられるかのようだ。子守唄の優しい旋律は、時代も洋の東西も問わない。女性ではなく、男性が歌う子守唄というのも新鮮だった。

ゆっくりとまどろみそうな空気を割かんばかりに、「カルメン」のアリア「闘牛士の歌」が続く。

二枚目が当たり役の宮本とあって、太い声がいかんなく発揮させられ、艶やかで力強い男の魅力を振りまく。先ほどのユーモラスなパパゲーノとはうって変わった役柄を軽々とこなし、役の世界を歌声と身体で表現して、その歌声は観客の胸倉をぐいっとつかみ寄せるかのように迫ってくる。もちろん歌い終わった後、ステージは観客からの大喝采に包まれた。


◆武満の音楽にのせて
プログラムの最後に歌ったのは、武満徹の「小さな空」。  

短い一時間という時間ではあったが、音楽を通して出会い、時間を分かち合うことのできた観客への感謝の気持ちを宮本は歌声にのせる。

切なく美しい武満の音楽が、後酔いのしない甘美な酒のようにホールを満たし、やわらかな空気が広がる。それが優しい幸福感となって押し寄せ、観客の側、私の内面にも感謝の気持ちを呼び起こした。

ロベルト・シューマンの「献呈」のアンコールも含めた一時間余りの音楽会は、あっという間に終わっていった。でも、たった一時間の間でも、バラエティ豊かに趣向をこらしたプログラムのおかげで、いつもにも増して充実した時の流れを感じることができた。音楽室からオペラ会場まで、演奏会全体が、じつは宮本が入念に構成を練ったエンターテイメントだったのだ。

宮本先生に、見事してやられてしまったのだった!
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by tritonmonitor | 2009-08-18 14:01 | ライフサイクルコンサート