NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
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音楽のある週末 <弦楽器の魅力> 第1回 千住真理子

5月22日(土)14:00開演
【報告者:Y・F/会社員/1階14列28番】

バッハの世界に浸れる至福のひととき-プロの技に感動-

今回はなんとJ.S.バッハの『無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ』全曲の演奏会だ。
私は全曲を通す演奏会を聞くのは初めてだった。バッハの世界に浸れる至福のひとときに期待がふくらんだ。無伴奏はソリストを100%丸ごと楽しめる。演奏者にとって、自分の世界を100%味わってもらえる機会でもあるのだ。
会場はほぼ満席で、年齢層も割と高めな印象を受けた。
第1番のソナタ、アダージョ。弓の先まで神経が行き届いている音色に会場が引き込まれていくのが客席の雰囲気でわかった。続くフーガやシチリアーノ、プレストが一気にバッハの静寂で厳かな世界へ誘っていく。
第1番のパルティータ。全体的に穏やかな曲想に高貴な音色が乗り、会場全体が陶酔感に包まれていた。
3番ソナタ。タフさが必要なフーガやアレグロ・アッサイは重音の連続の間に入ってくる高音は気をつけていないと、神経質な響きになりがちなのだが、千住さんはこの高音の扱いがとても丁寧で、人の声のようなソフトで美しい音色が響きわたった。
3番パルティータ。会場がもっと広く感じるような音色。なおかつ小さな音さえもきちんと拾っている。ホールの音響と曲・演奏者の相性のせいか、まるで石造の神殿で演奏を聴いているかのような神聖な空気と響きだった。
2番ソナタ。間の取り方が絶妙だった。余韻のある間の取り方をしつつ、なおかつ前進感がある。特にフーガは洗練された音と前進感と相まって、抑えたテンポでもみずみずしさを感じさせた。アレグロなどの躍動感のある激しいパッセージのある部分でも、音自体に全くブレがなかった。音のコントロールが行き届いていた。

観客の集中力がさらに高まっているのをホールの息遣いから感じる。後半にこれだけ観客をひきつけられるのも本当にすごい。それは、長いプログラムを計算して、パフォーマンスもきちんとコントロールできているからではないだろうか。

2番パルティータ。バッハを密度の高い音で綴ったという感じがした。最後にふさわしい集中力だった。2番は有名なシャコンヌを含む曲で構成されている。2番のこのシャコンヌでしめくくられるわけだが、このシャコンヌに対してはなんの気負いもなく始まったような気さえした。しかし、そこで演奏されたのは圧倒的に孤独で美しい音楽だった。人生の苦悩を癒すバッハの包み込むような音楽が会場を満たす。孤独が孤独を癒し、強さを与えてくれるようだった。

演奏終了後、ブラボーの声がかかる。鳴りやまない拍手。
全曲演奏でここまでの集中力を持続させたのだ。気力体力共に極限までこのステージで使っただろう。常人ならあの長時間の集中したステージでは倒れてもおかしくはなかった。千住さんプロとしての気魄を感じた演奏会となった。プロの演奏を生で観て・聴いて、バッハの無伴奏演奏の難しさとともに、プロの技に感動した。バッハの無伴奏は、普段ピアノの伴奏などがカバーしてくれるメロディーを一人でこなすので、重音がその他の伴奏付きの曲よりも圧倒的に多い。重音が多い分、弓のコントロールが難しいのだ。千住さんの演奏では、そのコントロールはもちろんのこと弓の先までムラのない音を出していた。これはまさにプロの技だと感動した。

今回の演奏会では,演奏者と一対一で向かい合っているような気分に観客はなったのではないかと思う。それほど演奏者・観客が集中をしていた演奏会だった。それとともに、そのように演出した照明も素晴らしかった。ほぼ中央のスポットライトのみが演奏者を照らす。そのような演出のおかげで,観客の視界も演奏者に集中し,一対一の精神状態を作り上げることができた。
演奏は一曲ごとに盛大な拍手がおくられ,感嘆のため息が観客からもれた。
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# by tritonmonitor | 2010-05-22 14:00 | ライフサイクルコンサート

昼の音楽さんぽ 第1回 藤原道山 尺八リサイタル

5月13日(木)11:30開演

【報告者:荒木紀子/中央区在勤/】

尺八クールジャパン

改めて考えてみると、今まで尺八の演奏会に行った経験がなかったことに気がついた。
尺八と聞いて思い浮かべるものと言えば、TVや映画の中で尺八を演奏する虚無僧の姿ぐらい。平均的な日本人がもつ尺八に関する知識といえばこのぐらいだろう。だから、藤原道山さんが革のジャケット姿で颯爽と舞台に登場した時には、何か今までの印象を変えるような事件が起こりそうな予感がした。

1曲目は「アメイジング・グレース」。いろいろなアーティストによって演奏されてきた名曲を日本の伝統楽器が奏でる。アイルランドやスコットランドの民謡が本になっているという説もあるからか、一瞬、尺八で奏でられる音が、アイリッシュフルートの音色のように感じられた。でも、すぐ次の瞬間には、私の中のDNAが音色の奥に潜む陰影のような部分を探し当てていた。

日本人にとって、尺八はDNAに組み込まれた音。どこかもの哀しく、それでいて緊迫した静寂感をもたらす音色は、つつましい日本の文化を表し、自分の体内の深い部分に語りかけてくるようで、遠い歴史の世界に想いを馳せる。

2曲目は、古典の邦楽として有名な「鶴の巣籠」。藤原さんは、今日の演奏会のために何種類かの尺八を携えて舞台に登場した。実は尺八は木ではなく、真竹という竹から作られているそうだ。そのため、長さや色もまちまち。その中からバームクーヘンのように縞模様の入った尺八で演奏する。前の曲よりもこもった奥ゆかしい音が響いた。尺八は、同じ高さの音でも、息や指の使い方、そして首の動きによって全く違う音色になるのだそうだ。尺八を演奏している姿をよく見ると、たえず首を動かしていることに気が付く。なかなか上下運動を要する楽器なのだ。

尺八には、「閉じられた空間を緊張感と静寂で満たすような音」というイメージがあったが、「かざうた」(作:川江美奈子)、「空」(作:藤原道山)では、聴いている内に、尺八の音が自分の内を経由して、開かれた外の世界へと広がっていく。それは音がホール内に響くだけでなく、外へ外へと未知なる世界へと誘ってくれるような心地良さだった。あとでプログラムを読み返して、「空」という曲名はまさにうってつけだったと気がついた。この曲に込められた、広隆寺の弥勒菩薩像への憧憬の念が、聴いている者を時空も超えた遥かな世界へと旅立たせてくれたのだ。

最後に藤原さんは、自身の師匠、山本邦山さんの作品「甲乙」(かんおつ)でしっとりとリサイタルの幕を閉じた。
最近では、尺八は海外でも人気があり、オーストラリアで尺八コンテストも開かれるそうだ。昨今の相撲界よろしく、尺八も海外のプレイヤーに押され気味で、日本人の演奏家が少ないらしい。

これまでDNAに刻まれてきたこの音が、これからもそうあり続けてほしい。日本の伝統楽器を見直して広める人も出てきている。東儀秀樹さんもそのパイオニアとして有名だが、藤原さんにも尺八でクールジャパンの世界をぐんぐん切り拓いていってほしい。幸い、これからもクラシック音楽とのコラボレーション、テレビや舞台での活躍もあるようでとても楽しみだ。
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# by tritonmonitor | 2010-05-13 11:13 | ライフサイクルコンサート

育児支援コンサート〜子どもを連れてクラシックコンサート

3月28日(日)14:00開演

【報告者:山白真代/江東区在住/】

3月28日、トリトン・アーツ・ネットワーク主催の親子で楽しめる春のコンサートがやってきました。
毎年人気の公演で、チケットも早々に完売。特に今年は、絵本「スーホの白い馬」が取り上げられた影響からか1月に完売するという快挙。
年々、ステージもお客様も盛り上がりを見せているようです。
私もこの公演を過去に、サポーターとして、又、観客として参加。今回は、モニターとしてこれまでと違った角度から、公演全体を見渡せる機会を頂きました。

まずは、いちご組子どもスタジオ・・・・・。
ここは、小さい靴が並べられた4歳の子ども達のお部屋です。
まさにコンサート・デビュー!と言った感じのおしゃれした小さなお客様でいっぱい。子ども達も、サポーターさんに暖かく迎えられ、安心してスタジオの空気に溶け込んでました。絵本に折り紙、紙芝居・・・と、6つのグループに分かれて和気あいあい。初めて顔を合わせる子どもと子どもが、あっという間にお友達になり、部屋は笑い声が溢れてます。

そして、時間は2時。
後ろから、演奏家3名(ピンクの衣装のフルーティスト、永井由比さん、そしてピアニストの永井幸恵さん、きらびやかな着物姿の尺八奏者、遠藤直幸さん)が演奏しながら登場。間近で見て、聴くフルート、ピアノ、尺八に子ども達は、大興奮です。
永井さん、遠藤さんは子どもの輪に入り、子どもに顔を近づけたり動き回ったりしながらの演奏。子ども達は自然と手拍子しはじめ、大喜び。永井さんのテンション高いお話と演奏に、最初から最後まで子ども達も集中力が途切れる事なく楽しんでいる様子でした。
30分の間に、子ども達の心をしっかりつかんだ3人。
まるで人気ヒーローのキャラクターを見るような憧れの目で、子ども達が演奏家をみつめていたのが印象的でした。

この公演の魅力のひとつが、このスタジオ。
ステージでコンサートを聴くだけでは創られない演奏家と子ども達の心と心の密着が、このスタジオで創られます。この楽しい時間が、第2部のコンサートに生きてくる仕掛けとなっているのです。

30分の休憩を終え、親子が集い、たくさんの人たちで埋め尽くされた客席。子ども達のワクワクした声が響き、熱気に包まれた中で、第2部の幕が開きます。
9人の演奏家による、クラシックの名曲のアンサンブル演奏でスタート。9人がそろったステージは、何とも豪華!スタジオで会ったお兄さん、お姉さんがステージで別人(!?)のように演奏している姿に、目をキラキラさせ、身を乗り出す子ども達。田村緑さんの優しく、分かりやすいお話で、それぞれの楽器についての紹介。
そして、楽器の音色の美しさを感じてもらおうと8種類の楽器で1曲を演奏リレー。
見て、聴いて・・・大人にも子どもにも音の色、響きの違いがよく分かる面白いコーナーでした。

次に、朗読の市橋邦彦さんが登場し、絵本と音楽の世界へ。
「スーホの白い馬」に、グリーグのピアノ協奏曲とどうマッチするのか?が、とても興味深かったのですがこれが、見事にぴったり合うのに驚きと感動。
市橋さんの語られる「スーホの白い馬」のストーリーが、グリーグの音楽で目に見えない風景
と、言葉に出来ない感情が心の中に大きく広がっていきます。
絵とストーリー、語りの力に、音楽の力が大きく加わり、絶妙なバラン
スで繰り広げられる「スーホの白い馬」。ホールにいる事を忘れ、自分もすっかり物語の中に入り込むという心地よい時間を味わいました。田村さんを始めとする演奏家達の作品に対する情熱が、客席の心をしっかり捉え、他にはない独自の、素晴らしい世界へと導いたのだと思います。
この公演で終わらせるには、非常に勿体無い、完成度の高い作品でした。
今回、見る事の出来なかった子ども達にも、何かの機会に、是非この感動を味わって欲しいと思います。

演奏家、サポーター、スタッフと多くの大人達が、音楽を通じて、未来ある子ども達を育てる理想的な環境が、このコンサートでは整っているように感じました。
すべての人たちにとっての“やりがい”がうまく集まり、良い出逢いを生み、そのエネルギーが更に次へと繋げてゆく良い流れが出来ていて、それぞれにとって、ここが居心地よいと思える場所となっているのではないでしょうか。

私も2歳の子どもを持つ母親として、「是非、親子で楽しみたい」と強く思う公演です。
こんなコンサートがあったら良いな・・・が、現実になったコンサート。これからもずっと継続され、音楽の魅力を多くのみなさんと共有出来る場所であって欲しいと心から願ってます。
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# by tritonmonitor | 2010-04-30 18:00 | ライフサイクルコンサート

山田和樹ブザンソン国際指揮者コンクール優勝記念 東京混声合唱団特別演奏会

4月16日(金)19:00 開演
【報告:三木隆二郎/1階C11列20番】

【出演】
◆山田和樹(指揮)
◆前田勝則(ピアノ)
◆東京混声合唱団

【曲 目】
◆ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第9番
◆リーク:コンダリラ
◆黒人霊歌:ジェリコの戦い
◆Rロジャース:エーデルワイス
◆木下牧子:夢みたものは…
◆林光:うた
◆上田真樹:混声合唱とピアノのための組曲「夢の意味」
◆ウルベル:ディズニー映画「南部の唄」よりジッパ・ディ・ドゥー・ダー
◆武満徹:混声合唱のための「うた」より「小さな空(武満徹:作詩)」、「島へ(井沢満:作詩)」、「恋のかくれんぼ(谷川俊太郎:作詩)」、「小さな部屋で(川路明:作詩)」、「死んだ男の残したものは(谷川俊太路:作詩)」
◆三善晃:混声合唱組曲「五つの童画」



 私事で恐縮だが、報告者は今回の指揮者である山田和樹が結婚に至るきっかけを作ったキューピッドの一人である。(三人いたキューピッドの二人目だったらしい) 
 私がアマチュアオーケストラに在籍していた2000年の春の演奏会にモーツァルトの協奏交響曲を演奏することになり、ある公開レッスンで知り合ったヴァイオリニストをソリストとして招へいした際、彼が藝大指揮科在学中で偶然そのアマチュアオケの指揮をしていたというご縁であった。当時の彼の指揮ぶりは「指揮台で踊るマエストロ」という雰囲気で、その天性の明るい性格と相まって練習が実に楽しく、それに引き込まれて演奏もうまくいくというものであった。
去年の夏、結婚式に呼ばれて軽井沢のホテルまで出かけたが、彼は式のごあいさつの中で「今秋ブザンソン指揮コンクールで優勝します。」と宣言して出席者の度肝を抜いた。
お父さんとも式後にお話しを伺う機会があったが、「あんな大仰なことを式のあいさつで言うなんて・・・」とおっしゃっていたものだ。
ところがその優勝宣言を現実のものとしてしまうところが、ヤマカズ(指揮者山田和樹)のすごいところである。
ところで当日の外の天気は4月も半ばだというのに真冬並みの寒さに加えて横なぐりの雨模様と、最悪の天候だったため、駅からホールへの道すがら、お客の入りを心配していた。ところが、である。入ってみると中は超満員で、知り合いを見つけて聞いたところによると、朝から「当日売りがないか」という電話には断りを入れていたとか。
評者はあいにく仕事が長引き、前半途中の愛唱歌からホール内に入って立ち見でしばらく聴いた。何回も東混を聴いているがこの日の演奏は第一生命ホールとの相性の良さが際立っていたように思える。ここ第一生命ホールではかつて、東混の岩城宏之が指揮を終わってアンコールの時、くるりと指揮台の上で客席に向き直り、「この第一生命ホールの響きが余りに素晴らしいので気に入った。だからこのホールください。」と言い始めてびっくりした思い出がある。
確かに「夢みたものは・・・」のしっとりとした叙情や「うた」、「夢の意味」など学校を回って好評だった曲の数々は最弱音のハーモニーが実に味わい深く響くのだ。
ただ一方、ディズニーの「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」のように、ノリの良さが求められる曲では、ホールの格調の高さに気押されたか、学校の体育館などで生徒の前で歌っている時に比べるとやや客席を巻き込む迫力という点で、特にソロの歌手がやや緊張気味だったのが惜しまれる。
しかし、第二部に入って武満徹の「混声合唱の『うた』より」では静けさと大きなうねりが交互に交錯して音の波が寄せては引いていくようで心地よかった。中でも谷川俊太郎の「恋のかくれんぼ」ではその詩の面白さも充分に味わえる歌唱であった。同じく谷川俊太郎作詞の「死んだ男の残したものは」ではライナーノーツによってこの曲が安保闘争の反安保集会のために作曲されたことを初めて知ったのだが、不思議な詩の背景が分かって興味深かった。
最後の林光の「五つの童画」は高田敏子の詩が先に出来ていてそれにイメージを合わせた作曲をしたものとのことだが、やはり童心に帰って自然の中を飛び回るような詩に見事にあった曲である。それを東混は自家薬籠中のものとして、山田和樹の指揮棒の思うがままに自由に飛翔していた。
全体を通してアンサンブルピアニストの前田勝則の演奏も東混とヤマカズのアンサンブルを絶妙なバランスで支えていたことは特筆に値しよう。
終演後、満面の笑みをたたえた田中信昭氏がヤマカズに「オメデトウ」を言いに楽屋口から入って行ったので、その後をついて行ったが、驚いたことに舞台のそでにステージから引き揚げてまだ1分もたたないうちに缶ビールで全員が乾杯していたのだ。それも飛びっきりの笑顔で。
まさに東混は自分達と音楽を作ってきたヤマカズの大指揮者へのデビューに立ち会ってこれ以上の幸せがないという雰囲気で今、ノリにのって光り輝いている。
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# by tritonmonitor | 2010-04-27 18:13 | TAN's Amici コンサート

育児支援コンサート~子どもを連れてクラシックコンサート

3月28日(日)14:00開演

【報告者:岡野惠子/美大絵本授業助手/2階L1列25番】


今回の絵本は、社会人の息子が今でも懐かしむモンゴル民話「スーホの白い馬」(1967年)でした。スーホは斧という意味を持つ人名で、モンゴルの伝統楽器モリンホール(馬頭琴)の由来にまつわる悲しくも美しい物語です。馬頭琴奏者である季波が作曲した作品や小学生のための音楽劇・物語集(2008年NHK東京児童合唱団)もあります。

子どものための音楽スタジオでは、開演を待つ子どもたちが臨機応変に対応するサポーターを中心とするスタッフとあやとり・折り紙・お絵描き・絵本でくつろぐ様子が印象的でした。いよいよスタジオが始まると空気は一転、活発な活動が伺えます。クラリネットのクラスのご挨拶は、ドビュッシーからジャズのガーシュイン等の演奏でした。クラリネット奏者の西尾さんの笑顔で軽快なクイズに嬉々と答え、黒く硬い材質が「グラナディラ」と知りました。動から静へと導く楽しい内容でした。

休憩を挟み、待ちに待ったみんな一緒のコンサートは、子どもたちを虜にする田村さんの問いかけとヴァイオリンより深い音色のヴィオラ、チェロ、クラリネット、澄んだフルート、豊かなホルン、軽快なマリンバ、ピアノとバトンの無い音のリレーで始まりです。「音楽と絵本」では、グリーグ「ピアノ協奏曲」にスクリーンいっぱいの赤羽末吉の絵と大塚勇三再話の朗読が、スーホの愛馬である白い馬が夢枕に現れ、横暴な領主に殺された自分の亡骸で楽器を作るようにスーホに伝える場面を、より一層深みの有る美しい物語として響かせます。何より演奏者の名司会が心地よく流れたプログラム構成でした。
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# by tritonmonitor | 2010-04-20 15:37 | ライフサイクルコンサート

育児支援コンサート~子どもを連れて、クラシックコンサート~

3月28日(日)14:00開演

【報告者:齋藤直美/月島在住/2階C3列2番】

 毎年3月下旬に行われているこのコンサートは、今年で9回目になります。3歳未満のお子様は託児サービスが用意され、コンサート終了まで専門スタッフが見てくれます。プログラムは2部構成ですが、第1部は、幼稚園児は親とわかれて「子どものための音楽スタジオ」で楽しめる内容です。演奏家によるミニコンサートや楽器体験など、年齢別に毎年企画されています。小学生以上は大人と一緒にホールで「大人のためのコンサート」を鑑賞。そして、第2部はホールで「みんな一緒のコンサート」という構成なのですが、毎年のように完売しています。
 今回、完売の時期がいつもより早く、しかも小学生以上に人気があると聞いていたので、「大人のためのコンサート」とはいえ、子どもたちの賑やかな感じがあっても不思議ではないかなと予想していました。
 ところが、そんなことはなかったのです。考えてみれば、この数年、中央区ではTANが「アウトリーチ」として幼稚園や小学校で、田村緑さんや数々の演奏家の生演奏を音楽室などで経験している子どもたちがいるわけで、今回のコンサートへ足を運んでいる児童たちは、もしかしたら「学校で聴いた。ホールに行きたい」と、親御さんを説得していて、ここに座っているのかもしれないなと思う雰囲気でした。
 
 【開演前~第1部】
 開演直前は、大人の静かなおしゃべりが華やいでいて、外の寒さとは対照的なあたたかな雰囲気で、子どもたちはしずかに始まるのを待っているようでした。
 第1部が始まり、鮮やかな衣装の田村緑さんが登場し、早速1曲目、メンデルスゾーンの『春の歌』を演奏。最初の第一音から、引き込まれてしまいました。
 演奏を終えて、田村さんがマイクをもって挨拶すると、子どもたちからお返事がかえってくるのを聞いて、小学生が確かに多そうだと納得した瞬間でした。田村さんは、ゆっくりと語りかけるようにお話をされています。そのためか、小学生だけでなく、大人もゆったりと落ち着いてコンサートを楽しめる雰囲気になっていきます。
 メンデルスゾーンについては、“風景や情景を音にするのが得意”と語りかけ、次のプログラムのキーワードは“恋”ということでお話を進めていきます。幸せ絶頂に書いたシューマンの歌曲をリストがピアノ曲に編曲した『献呈』と、逆に悲しい恋物語として、プロコフィエフが作曲した『「ロメオとジュリエット」より「モンタギュー家とキャピュレット家」』を紹介します。これはうれしい「おまけ」でプログラムにはのっていませんでした。曲のモチーフを少しずつ披露して解説をしてくれます。両家がぶつかりあったような演奏部分から一転して静かな部分があるとおっしゃってから演奏すると、会場はシーンとして引き込まれているのが伝わってきました。
 そして、ショパンの『別れの曲』では、曲の世界に没頭しました。演奏後、ショパンについて生誕200周年であること、ショパンのピアノ協奏曲が演歌のメロディと似ているのでは……田村さんの学生時代のエピソードを交えお話が続きます。第1部の最後は、『華麗なる円舞曲』で第1部が終了しました。
 
 【休憩時間のロビー】
 ロビーに出てみると、この日の演奏家のCDと第2部で朗読される絵本を中心とした即売会が行われていました。中には、CDの前でたっている女の子の姿も。きっと、第1部を聞いて、欲しくなったのかしらと思いました。他にも、昨年までは音楽スタジオだったお子様が、今日から第1部を一緒に聴いたというお母様のうれしそうな表情から、長く続いているシリーズに毎年参加している親子もいるという発見もありました。
 実は、私自身はこの「育児支援コンサート」をホールで聴くのは始めて。今までは、サポーターとして音楽スタジオのお手伝いをしていたので、スタジオでのお子様の音楽体験の様子は何度か拝見しています。その子たちがいつの間にか、小学生になって……まさにライフサイクルコンサートとはこのことだなと思いました。

 【第2部 前半】
 そして、「みんな一緒のコンサート」が始まる直前は、小さな子どもたちの可愛い声があちらこちらから聞こえてきます。スタジオでの時間がいかに楽しかったのかが伝わってきます。1曲目はビゼーの『《カルメン》組曲より〈前奏曲〉』で賑やかにスタートしました。演奏後、参加したスタジオの確認や楽器の説明をしているときの子どもたちの反応が微笑ましく、それに応える演奏家もいい感じです。
 続いて、「楽器の音色を覚えてほしい」という狙いで、演奏家がリレーをしながら楽曲を演奏していくコーナーが始まりました。目と耳で楽しむことができた内容でした。弦楽器から管楽器そして打楽器とリレーしていくという場面は、なかなか見ることができません。音色の違いを知ることが出来てよかったです。
 そして、プーランクの『3つのノヴェレッテより第1番』を管楽器とピアノが、リムスキー=コルサコフの『熊ん蜂の飛行』をマリンバとピアノが演奏しました。管楽器の音のやわらかさには、うっとりしてしまいました。

 【第2部 後半】
 第2部のメインでの「音楽と絵本」は今年は、『スーホの白い馬』です。このお話はモンゴルが舞台ですが、これを田村さんは、ノルウェーの作曲家グリークの『ピアノ協奏曲』と朗読で進めていきます。この組み合わせが、こんなにピッタリと合うとは、やはりアーティストの想像力の強さなのでしょうか。迫力のある演奏で、時折、お客様の「すごい」というつぶやき声が聞こえてくるほどでした。また、場面によって、絵本の表示方法を幅や高さなど変化させて、目で見ても楽しめる演出がありました。朗読と演奏と絵本のバランスが絶妙で、最後まで飽きさせません。朗読の市橋さんは、声楽を専門に勉強して小学校の音楽の先生を長くされてきたとか。だからこその朗読の説得力がありました。

 【終演】
 アンコールでは『「動物の謝肉祭」からフィナーレ』で、賑やかにコンサートが終わりました。これまでは、サポーターとして参加していたので最後のお客様まで見送って、子どもたちの笑顔を見てほっとしておわるのですが、今年は違います。自分の子どもを託児に預けて、私がコンサートを楽しみ、主人は音楽スタジオでお手伝いと、家族でそれぞれの場面で参加することができました。
 いつか、私の子どもも音楽スタジオに参加するのかなと考えながら託児サービスに向かったのでした。
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# by tritonmonitor | 2010-04-12 18:47 | ライフサイクルコンサート

カントゥス・クァルテット《うたは時をこえ海をこえ》

3月13日(土)18:00開演
【報告:津下 祥子/音楽家/2F1列45番】


~Blowing the strong wind by Cantus String Quartet~



3月13日土曜日、久しぶりの晴れた暖かい陽気。先日11日には九州南部・奄美地方で今年全国初めての春一番が吹いたそうだ。春を告げるような力強い風に追い立てられて、休日のジョギングを楽しんでいた頃、思わぬ突然の知らせが届いた。コンサートのメールだ。ここにも追い風が吹いているのか、興味をそそられて会場に足を運んだ。

出演はカントゥス・クァルテット/Cantus String Quartet、全員がアメリカ音楽の地を踏んだ日本人メンバー。2005年に結成され、東京、横浜を中心に活動されているそうだ。プログラムはシューベルト弦楽四重奏曲第13番イ短調op.29 D.804「ロザムンデ」、アイヴス弦楽四重奏曲第1番ハ長調「救世軍より」、チャイコフスキー弦楽四重奏曲第2番ヘ長調op.22。時代と様式を越えた演目、まさに彼らがこのたびテーマする「うたは時をこえ海をこえ」といった内容だった。

東京ベイエリア__いわゆる都会の視覚的・聴覚的な刺激の中でクラシックのコンサートに足を運ぶことは、日々の生活では味わえない時間を体感することができる。ある種、現地へ行ったつもり時間旅行とか、自らの内面を解放するメンタルダンス、演奏家の巧みや表情を味わう…必ずしも専門的である必要はなく、何でもいい、リラックスして時間を楽しむコツを持つと面白い。今日もそれを知っているのか、客席は活気があり満席に近く、楽器ケースを持つ聴衆もちらほら。演奏会への期待が伺えて、楽しみになってきた。

1曲目、シューベルトは出だし本当に静かな音から始まった。会場を日常から引き離してしだいに演奏へ引き込んでいくかのように。クローバー畑に飛ぶ蜂の羽音も聴こえる様な、穏やかな音楽。第1楽章で織り成す穏やかさはとても内的であるが故に悲しみに対する嘆きも含まれていて、第2楽章では日々の幸せな生活を、第3楽章では人の町の暮らし、再び実感する悲しみ、第4楽章では演奏家の踊るような音楽を味わうことができた。

2曲目、アイヴスはアメリカ現代音楽のパイオニア的存在。軍楽隊でバンドマスターを務めた父親を持ち、エール大学でホレイショ・パーカーに作曲を師事、自身保険会社の経営者という経歴。学生時代に作曲された作品は、第1楽章の若々しく健全なフーガから始まる。何か志と理想の建築物を妄想させる堂々たる響き。第2楽章は日々の思考を、第3楽章でも賛美の色が濃く、アイルランド的な響きにアメリカの港を思い描いた。3拍子や夜を思わせる民俗的風景があり、第4楽章にはマーチやリズムなどにアメリカ的ナショナリズムを感じるフィナーレだった。素晴らしいのは、そういった音楽のキャラクターを見事に披露してくれたカントゥス・クァルテットだ。公演休憩中、私は高揚感に包まれていた。

3曲目、チャイコフスキー。弦楽器の湾曲したフォルムがとても似合う作曲家と私は勝手に思っている。弦楽器のことをよく知っていて、情熱的で、ベートーヴェンが仮に内臓をえぐるような音楽なら、彼の弦楽四重奏曲は肉体をえぐりつかむような表現を私は魅力に感じた。第1楽章では第1ヴァイオリンのソロが早速魅せる。旋律はオクターブで強調され、チェロの深い低音が幅広く豊かにしている。第2楽章では遠く転調して甘くフランス的な響きを、第3楽章冒頭ではっと目を覚まさせられてそれぞれの演奏家の存在に気づかされる。同じヴァイオリンでも第1Vn.の物集女さんと第2Vn.の梅原さんとではソロの音色が違う。勝手な例えで恐縮だが、同じストロベリーケーキでもショートケーキとミルフィーユの食感の違いのような。ヴィオラの大島さんは何時も存在しているペースメーカーで、チェロの森澤さんは絶対的な安心感を与えてくれているようだ。第1Vn.だけ若干離れたように見えるセッティングも4人の音楽作りの理由だろうか。第4楽章、たった4本の楽器がシンフォニーのような表現力でロシアを謡って締めくくられる。

アンコールにはグラズノフ作曲「5つのノヴェレット」より「ワルツ」が奏され、爽やかな印象の中コンサートの幕が閉じられた。

終演後ロビーでは活気に溢れた聴衆が4人の演奏家を取り囲んで演奏会の喜びを分かち合っていた。会場を後にする頃にはすっかり冬の冷たい空気に戻っていたが、春一番も近いという気分にさせてくれた一日だった。
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# by tritonmonitor | 2010-03-18 13:43 | SQWシリーズ

第8回ビバホール チェロコンクール第1位受賞記念 加藤文枝 チェロリサイタル

2月28日(日)14:00開演
【報告:井出春夫/会社員/2FL1列46番】


このコンサートは、昨年行われたビバホールチェロコンクール第1位受賞記念コンサートである。
このコンサート当日、朝から雨が降り、大都市東京を多くのマラソンランナーが走っていた。そればかりか、前日、チリで大地震があり津波がくるとかで「川や海の近くに行かないで」という広報車までホールの周りを走っているという周りが慌ただしい日であった。

このコンサートは過去何回か聞いているが、個人的に楽しみにしているコンサートである。前回と今回は女流チェリストが優勝した。毎回違ったタイプのチェリストが出てきてとても面白い。
このコンサートは、普段のコンサートとはちょっと雰囲気が違う。開場する前も後もロビーのところどころに人盛りがある。何だか、同窓会や成人式場みたいだ。

開演の頃には、太陽が顔を出し始めた。

曲目は、ドビュッシーの「チェロソナタ」、デュティユー:ザッハーの名による3つのストローフェ」(無伴奏)、今年生誕200年のシューマン「幻想小曲集」、休憩を挟み養父市長の挨拶、そしてラフマニノフ「チェロソナタ」聞いてみて、加藤さんにぴったりのプログラムであると思った。加藤さんのチェロは、とてもよく歌い、あまり技術を感じさせない。
ドビュッシーは、明るい音色でとてもすがすがしい感じを受けました。
デュティユーは、チェロの音がすーっと客席に聞こえてくる感じでとても美しかった。
シューマンの幻想小曲集とアンコールで弾かれた「詩人の恋」から「あかりさす夏の前に」は、ピアノとチェロの対話が美しい。特にピアノの音色が少し輝いて聞こえた(ちょっと「のだめカンタービレ」ののだめが宮廷でコンサートをしたときみたいに)。
ラフマニノフは、ピアノが張り切り、チェロがとても美しく歌いとても楽しめた。
アンコールは、最初チェロの名曲サンサーンスの「白鳥」ピアノは少しクールに聞こえたがそれがかえってチェロのたっぷりとした歌心を引き立てた。
「白鳥」を聞くと、なぜか私は、山本直純さんのなぞかけを思い出す。白鳥とかけて禁煙ととく。そのこころは?というものだ。
とても楽しめた演奏会であったし、もし、機会があったらコンクールにも足を運んで見たくなった。
加藤文枝さんのチェロで今度は、バッハやベートーヴェンの作品を聞いてみたいと思った。

最後に、コンサート終了後の客席からの退席について、日頃何気なくやっていることであるが、そのタイミングは、なかなか難しいなぁと感じた。完全に終わりまでいられるなら問題はないけれど、予定が詰まっていたりするとどうしても早く出なければならない。たまたま演奏者の出るタイミングと自分が立つタイミングが合ってしまうと何となくばつがが悪い。コンサート終了後、余裕を持って帰れるようにしようと思った。
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# by tritonmonitor | 2010-03-13 22:40 | TAN's Amici コンサート

第8回ビバホール チェロコンクール第1位受賞記念 加藤文枝 チェロリサイタル

2月28日(日)14:00開演
【報告:三木隆二郎/自由席 2階C1列15番】

 本公演は兵庫県養父市で二年に一度行われる第8回ビバホール・チェロコンクール第一位受賞記念として行われた共催公演です。

 このビバホールコンクールは1994年にスタートされた地方の小さな町が行うものでご多分にもれず財政難で厳しい状況にも拘らず堤剛氏をはじめとする審査員や毎回、100人を超える住民ボランティアの支援により立派に運営され続けられ、今や「若手チェリストの登竜門」と呼ばれるまでになっています。

 この日のプログラムと共に挟み込まれたチラシの中には「第9回ビバホール・チェロコンクール」「元気な養父づくり応援寄付金」に加えて「一円電車募金」趣意書が含まれていました。「一円電車募金」とはかつて明延鉱山で走っていた乗車賃"1円"の鉱山鉄道の保存・活用活動としての募金への協力お願いです。

 さて加藤文枝さんは同志社高校を卒業し東京藝術大学から今春、同大学院に進学予定の若き俊英でこれまでに、日本クラシック音楽コンクール全国大会第3位、札幌ジュニアチェロコンクール優秀賞、泉の森ジュニアチェロコンクール高校生以上部門金賞、京都芸術祭「世界に翔く若き音楽家たち」奨励賞を受賞し、既に大阪センチュリー交響楽団とも共演し、2006年よりパリのエコールノルマル音楽院に給付生として入学、という綺羅星のような経歴を築いた上で2008年のビバホール・チェロコンクールに第1位となっておられます。

 その後も2009年には東京藝術大学内にて安宅賞を受賞され、東京音楽コンクール弦楽部門第2位となり、今、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いを持ったチェリストと言えるでしょう。

 ステージが舞台明りになると純白ドレスで堂々と登場し、一曲目はドビュッシーのチェロソナタです。この曲は作曲家最晩年の様々な楽器の為の6つのソナタの一つですが、チェロ奏者にとってドイツロマン主義とは正反対の極めて繊細な演奏を求められるレパートリーです。冒頭の低音部から上向する音型からピアノと精密なアンサンブルが要求されます。 加藤さんの演奏は実に磨き抜かれたもので、特に親指によるピチカートはホールに良く響き渡り演奏効果を上げていました。

 二曲目のデュティユーの「ザッハーの名による3つのストローフェ」と言う曲はスイスの指揮者パウル・ザッハーの功績を讃える為にロストロポーヴィチが世界の12人の作曲家に委嘱した作品の一つだそうです。
 最弱音のハーモニクスもよく響かせて巧みな弓さばきで難曲を聴かせるのに成功していました。

 三曲目はシューマンの幻想小曲集(Op73) です。弾き出しから万感迫るロマンチシズムのほとばしりが感じられ、卓越した技巧の持ち主であることが証明されていました。

 四曲目はラフマニノフのチェロソナタト短調(Op19)です。この曲はシューマンから始まったロマン主義の行き着く姿があるともいわれますが、ロシア的な叙情をたっぷりたたえた名曲です。ただその為に、チェロとピアノのアンサンブルによってはチェロが隠れてしまって聴きとれないという危険性も出てくる難曲でもあります。
 加藤さんの奏する1楽章は堂々とした風格を持ったもので、2楽章はアンサンブルピアノが水際立った演奏で、良くチェロを支えていました。3楽章は濃厚なロマンチシズムの一番の聴かせどころをたっぷりと歌ってくれました。4楽章はだんだん興奮してくるとピアノの分厚い響きにややチェロのメロディが隠れがちだったのが惜しいように思われました。

全体を通して才能豊かなチェリストをしっかりと支えていたアンサンブルピアニストは入川舜です。

アンコールの1曲目は白鳥をしっとりと、2曲目はプーランク作曲『ルイ・アラゴンによる2つのポエム』より「C」、3曲目はシューマン『詩人の意』より「明りさす夏の朝に」でした。
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# by tritonmonitor | 2010-03-08 09:54 | TAN's Amici コンサート

クラシック はじめのいっぽ vol.19 チェロ&ピアノ ~石 坂団十郎&マルクス・シルマー

2月10日(水)11:30開演
【報告:齋藤直美/月島在住/1階14列28番】

 今回は、チェロとピアノで全曲、そしてベートーヴェンの作品 だったので、とても楽しみにしていました。
 チェリストの石坂さんの座った場所は、ピアニストのすぐ横で、 寄り添うような感じで座っていました。通常、あまり見たことのない風景が、まず印象的でした。そして今日の演奏が楽しみになってきました。
 プログラムの解説によれば、この日の選曲は、ベートーヴェンが 20代に書いた作品が中心となっているとのこと。ベートーヴェン は、チェロの曲でありながらも、ピアノが大活躍していることが多 いので、ついついピアニストに注目してしまいます。
 その期待以上に、マルクス・シルマーさんのピアニシモ (pp)には、震えがとまりませんでした。そして、ソナタで は、力強くチェロを誘導していると思いきや、ときおり、相手を気遣っているような雰囲気で振り返る。そんなとき、チェリストも、堂々と弾いていながら、ピアノの方に身を傾けている感じが微笑ましく感じました。寄り添いながらの二人の様子は、奏でられる音に表れていて、ここちよい雰囲気が伝わってきました。
 変奏曲では、一つ一つのモチーフが短く次々とうつろっていくので、その変化を追いかけているのが楽しかった。また、ヘンデルの主題による変奏曲の中の短調の時のチェロは、楽器そのものの味わいを響かせ、最後の変奏では、チェロとピアノの掛け合いが見事でした。

 ところで、このシリーズのもうひとつの楽しみは、演奏者によるお話なのですが、アンコール曲のタイトルをアナウンスするまで、今回ありませんでした。珍しいことですが、プログラムの楽しさを半減させるほどではなかったように感じます。その要因は、緊張感をもって聴くことができ、そして全曲ベートーヴェンの作品だったことも関係していると思います。アンコールが仮になかったとして も、それで満足なほどの充実感がありました。
 そんな印象でしたが、お待ちかねのアンコールは、シューベルト「アルペジョーネ・ソナタ(第2楽章)」。チェロらしい柔らかな音でメロディーが流れてきて、「いいコンサートだった」とひとり、にっこりしてしまうほどの出来映え。違う作品も聴いてみたいし、何年か後に再び、本日の二人のベートーヴェンを聴く機会を、このホールで持てることを期待してしまいました。
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# by tritonmonitor | 2010-03-08 09:50 | ライフサイクルコンサート