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NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
by tritonmonitor
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2005年10月30日:ふたりでコンサートⅡ                ~イタリアの歌たち再び

【報告:渡辺和/音楽ジャーナリスト/2階R2列36】 

トリトン・アーツ・ネットワークが主催する演奏会は、基本的には全てシリーズとしての位置付けがあるそうな。10月30日日曜日の午後、第一生命ホールで行われた「ふたりでコンサートⅡ」は、「ライフサイクル・コンサート」に分類されている。その意味がどうあれ、「コンサートを中心とした休日の生活サイクル」としてパッケージが作れるオプションが様々に用意されていたことは確かだ。

 この演奏会を「理想的」にモニターするためには、以下のようでなければならぬ。
 まず、夫婦者か友人とでの参加。ペアチケットを購入し、自宅最寄り駅から電車を乗り継ぎ、午前11時に地下鉄月島駅6番出口に集合。佃在住TANサポーターさんの先導で、佃島のあちこちを眺め歩き、隅田川縁を歩き、軽くランチ。ホールの客席に座り、終演後はトリトンのレストランで東京湾岸の夜景を眺めながらディナーを頂く…という筋書き。これでペアチケット食事電車賃込みでお二人様1万5千円くらいかしら。熟年夫婦の秋の日曜日の楽しみとすれば、妥当なところだろう。

 そんなレポートが出来れば理想なんだろうが、筆者のその日の実態たるや以下。
 まず、地元佃在住のオッサンがひとり、チャリチャリと自転車を転がしてトリトンまで行く。自転車置き場に留め、フードコートでハロウィン装束の子供らが行進するのを呆然と眺めつつ焼き鳥丼を喰らい、本屋を覗き、ホールへ向かい演奏会を鑑賞。終るや、時計を覗きつつ連絡先に電話を入れ、相手に渡すものを渡し、家に飛んで帰って別の場所で7時から始まる某弦楽四重奏団マスタークラスに向かうべく地下鉄月島駅へ。いやはや。
 「ライフサイクルコンサート/ふたりでコンサート」の趣旨に反するのは明瞭。だから、このレポートは、意図された聴衆対象ではない場所からの感想である。

 なにはともあれ、2階横から客席を見渡せば、ほぼ満員。スタッフに拠れば、聴衆の実数は600弱。そのうちペア券は100セットほどというのだから、「ライフサイクル・コンサート/ふたりでコンサート」としての趣旨は伝わっているといえるだろう。嫁さんと一緒にオペラの歌なんて演奏会に来ちゃったよ、という感じの恥ずかしげなオジサンたちもチラホラ。数は少ないが熱心な聴衆が集まる「クァルテット・ウェンズディ」の客席を見慣れた目には、普段とは相当に違ったホールの雰囲気である。ロビーから眺める佃や銀座方面の風景を携帯電話のカメラで記念撮影をしたり、あれが聖路加タワーで向こうが銀座、あっちが新橋のコレドで……なんて珍しそうに話し合っているご夫婦の姿も。おお、夏の住吉神社の例大祭で一緒に浴衣で御輿を担いだ町内会役員の豆腐屋さんご夫妻がいるではないか。「第一生命ホールって、一度行ってみたかったんだけど、なかなか機会がなくてねぇ」と、自宅の方を眺めていらっしゃる。

 で、音楽である。バリトン折江忠通が司会進行を務めつつ、藤原歌劇団がこの日のために選んだ若手・実力派歌手が四声部並び、次々と声を披露する。お話で客席を笑わせ、ワイン瓶一本を小道具の狂言まわしにさりげない情景を描き、ミュージカル・ナンバーでは舞台で踊り、さらには客席から登場した赤いドレスのカルメンが奥様と連れ立って来たお父さんを誘惑しドギマギさせる。さすがにオペラに慣れた方々、大人の芸である。こんなオペラアリア集の演奏会は、客席の方がある程度以上「楽しんでやるぞ」と気構えていないとしらけてしまうものだけど、さすがにこの日の聴衆は判っている。このような「大人の雰囲気」が作れる演奏家は、案外いない。それに乗れる聴衆も、案外といないもんなのだけど。

 というわけで、孤独なオジサンのレポートはこれにて終了。

あ、ひとつ付け加えておきましょう。晴海の新しい第一生命ホールでは、このようなイタリア系声楽のコンサートは珍しいようだ。でも、日比谷の旧第一生命ホールを回顧できる音楽ファンならば、あの場所が誰よりも声楽家に、特にイタリア系の歌い手たちに愛された場所だったことを、記憶しているだろう。旧第一生命ホールは、帝劇裏の便利な歌曲リサイタル会場だったのだ。近所の帝国ホテル住まいの藤原歌劇団創設者藤原義江を筆頭に、長門美保や柳兼子、果ては鮫島有美子まで、数多くの歌手達があの重厚な空間に声を響かせていた。それに、長くイタリア声楽コンクールの会場だったのだ。藤原歌劇団の古株には、お堀端の旧第一生命ホールを懐かしく想い出す者も多かろう。

 そんな過去の日がちょっとだけ蘇ったような、一瞬のデジャヴ。そんな感慨を抱いたのは、他に誰もいなかったかもしれないけど。
by tritonmonitor | 2005-10-30 18:40 | ライフサイクルコンサート
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