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NPOトリトン・アーツ・ネットワークの活動レポートです。詳細はhttp://www.triton-arts.net
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2007年1月31日(水)クァルテット・エクセルシオ~ラボ・エクセルシオ世界めぐりVol.6イギリス編

1F-10-25番 佐々木久枝(会社員・華道教授/中央区在勤)

以前彼らの演奏を聴いたのが北欧プログラムだったので、あれからどれ程ごぶさたしてしまったのだろうか。ちょうど日程も良かったので本当に久しぶりに彼らと音の旅に出る事が出来ました。

まずは今年生誕150周年を迎えるエルガーのホ短調クァルテットから。第1楽章アレグロモデラートでは哀愁のきわみという印象が強く、展開部での特に第1ヴァイオリンが、今にも弦が切れてしまいそうなくらい気合を入れた弾きぶりを見せており、緩急のつけ方が巧みでした。第2楽章ポコアンダンテではイングランドの民謡を思わせる旋律が大変印象的でした。のどかな田園風景を思わせるチェロパートや、展開部でのヴァイオリンのピチカートには後拍にも余韻を漂わせておりましたが、かと言って展開部では過度の興奮を控え変拍子の如く次々と動きをもって弾き進められていくのが印象に残りました。第3楽章アレグロモルトではエルガーの重厚な交響曲を思い起こさせる熱狂的なアンサンブルでした。中間部でのたたみかける場面や「ンタタータタン♪」というリズム支配とたてノリが引き立っておりましたが、そう、エクセルシオの魅力はこのタテのすっきりした刻みにあると思われます。途中テンポの激しい動きにも動ずる事なく良い意味でマイペースの演奏を繰り広げていました。

続くブリテンのクァルテット第1番二長調では、生きていた時代をそれとなく映し込んでいるように思えました。第1楽章アンダンテ~アレグロヴィヴァーチェでは、繊細な祈りを思わせる冒頭部分と激しい音楽とが対峙するインパクトの強い構成で、エクセルシオの面々も真っ向から取り組んでいました。チェロのピチカート余韻を抑え気味に弾く部分は何故かひちりきのような響きを思い起こさせ、琴とひちりきのような趣の調べが第1ヴァイオリン、チェロ、第2ヴァイオリンと順に投げ交わされる旋律部分はまるでグレツキの古風な舞曲モチーフを思い起こさせてくれ、ちょうど音という色をステージ空間に塗り重ねていくように聴きました。第2楽章アレグレットでは作曲者ブリテン特有の張り詰めた行進曲のような印象で、スメタナのモルダウの舞踊テーマを思わせる歯切れ良い刻みを聴かせていましたが、これは不安に怯えるブリテン自身の心そのものを正にあぶり出さんとしていたのかもしれません。第3楽章アンダンテでの瞑想曲部分ではグレツキの悲歌のシンフォニーを思い起こさせる第1ヴァイオリンソロとチェロの息の長さ、3声の歌を聴きながらチェロもまた淡々と自ら歌っていく展開が聴きもので、やはりグレツキの古風な組曲3曲目のように、一面を厚い音でどどっと塗り込めていくような場面では聴き入りました。イギリスでグレツキのシンフォニーがジャンルの境を越えてヒットチャート上位に挙げられたという事もふと思い出したのですが、もしかすると聴き手側の心の奥深くに何か響き合うものがあったのかもしれません。さて、フィナーレのモルトヴィヴァーチェではたたみかけていくようなチェロの激しさと音階を繰り返す所には何故かキラールを思い浮かべました・・・・もっともキラールはある意味で”突き抜けて行ってしまっている”のですが。ブリテンの描き出したアンサンブルにも葛藤という二文字が浮かび上がっているように感じられました。

休憩後はディーリアスのクァルテット第2番「去り行くツバメ」が披露されました。第1楽章では文字通り動きを十分に伴いつつ、穏やかな叙情に溢れて伸びやかな演奏に安らぎを覚えました。続く第2楽章では「素早くかつ明るく」という表記にならい田園舞曲風のメロディラインをヴァイオリンからチェロへののどかなリレーと他3部の寄り添うような様子が鮮やかに描き出し、全体を通じて元気はつらつとしたスケルツォを楽しませてもらいました。第3楽章「去り行くツバメ」ではディーリアス特有のノスタルジーが心を打ち、黄昏の歌を否応なしに思い起こさせるような切なさに満ちていました。フォーレの曲の如く不思議な心地良さを持つ和音進行がまた魅力的でした。フィナーレは再び「きわめて素早く」陽気な田園舞曲が繰り広げられました。こういう曲では冒頭が歯切れ良く入らないと美しくないのですが、第1ヴァイオリンによる陽気な歌い口がグングンとアンサンブルを積極的に引っ張っていました。

無事音の世界巡りから戻った面々はホッとした様子でアンコールに「愛の挨拶」を披露してくれましたが、ヴィオラが旋律を弾くのは初めて聴きました。何とも暖かさに満ちたひとときでした。さて、今度はどういう旅路を見せてくれるのでしょうか?
by tritonmonitor | 2007-02-27 02:26 | SQWシリーズ
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